第964話 眷属の運命
苺ちゃん視点です。
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『おい、我が眷属よ』
それはお姉さまと一緒に狩りをしている時でしたわ。突如、私の脳内に声が鳴り響いたの。
頭の中に声を響かせるというほぼテレパシーのようなことができるのはあの存在しかしない、と私は瞬時に思い至ったわ。
『いかがなさいましたか、海神様』
『うむ、神殿内に問題が発生したのだ。至急こちらに向かうのだ』
『今から、ですわっ?』
今からってそんな急なことありますの? 今、私はお姉さまと狩りをするという最高に至福で至上な時を過ごしていますのに! それに、契約をしてから全く音沙汰がありませんでしたのに、そんな急なこと言われましても困りますわ。
『そうだ、今すぐだ』
『すみません、海神様。本日は予定が入っておりまして、後日でもよろしいでしょうか?』
『何っ? 事態は一刻を争うのだぞ、今すぐここにくるのじゃ。そもそも眷属如きが我に物申すでない!』
私がお断りいたしますとそんな風に怒られましたわ。なんで私が怒られているのでしょうか? そもそも人に予定があるのならばしっかりアポを取るべきじゃなくって? 私はこの日の為にしっかりとお姉さまにアポを取ったんですわよ?
いくら海神様とは言えども、マナーは大事ですわ。
『海神様、分かりましたわ。明日一番にお伺いいたしますわ。それで良いですわよね? これが私からできる最大限の譲歩ですわ』
『さっきからコチラが下手に出てれば抜け抜けと……!』
あの態度のどこか下手なんですの、全く。海神様にはお姉さまの爪の垢を煎じて飲んでほしいですわ。そうしたら私も少しは言って良いとも思えると思いますわ!
『ふっ、最初からこうしておけばよかったのだ。自由意志に任せようとした我が間違いだった。人間はいつも利己的だからな。強制召喚』
「きゃっ!」
海神様がそう言うと私の足元に変な魔法陣が生まれましたわ。強制召喚ってことはもしかして強制的に連れていかれるってことですの!?
「お、お姉さま!」
『いいか眷属に自由などないのだ。それをゆめゆめ忘れるでないぞ。貴様には神殿に着き次第侵入者の排除を行ってもらう。それさえ終われば返してやろう、だが終わらなければ決して返すことはないと心得よ。さあ、眷属よ其方の力を示すのだ』
薄れゆく視界の中でそんなことを言われましたわ。はぁ、お姉さまとの狩りが……
こうなった以上、海神様はもちろんのこと、その侵入者とやらは絶対に許しませんからね! 天罰を食らわせますわ!
❇︎
転移が終わるとそこは神殿の中でしたわ。完全に海の中で水中エリアになっていますわね。私は息……できてる?
どうやら私の顔の周りには酸素の空間が生成されているようです。どうやら海神様がやってくれたのでしょうね。あれだけ尊大な態度を取っていましたのに、、ツンデレってやつなんですの?
まあ、何はともあれとにかく侵入者を排除しなければなりませんわね。
私は意を決して、転移された部屋から伸びている階段を上りましたわ。
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