第963話 海の底と海の鮫
海底神殿の頂上に降り立った俺は一旦深呼吸して、頂上を爆破させた。
「【爆虐魔法】、ダイナマイトボム」
ッズドーーン
いつもの陸上での爆発音とは違って、水中だからかかなりくぐもった音が響いたが、逆に水を伝って振動が届いているのか腹の奥底まで響くような爆発だった。
それにしてもこの状況、どこかで体験したことがあるような? まあいいか。チャチャっと侵入してお宝とボスを倒してあとはトンズラしよう。
とにかくプレイヤーに見つからない、遭遇しないことを第一に急いで行動するんだ。
穴を開けた天井から神殿内に侵入したのだが、そこには特に何もなかった。小さい空間があって下への階段が伸びているだけだったのだ。
くそ、天井にお宝、がなくともボスはいると思ったんだが、頂上は最上階ではないらしい。まあ、海底神殿と言ってるのだから、最下層にボスがいるのが道理かー。これも俺みたいなズルして入る奴を防ぐためなんだろうな。
あまり文句ばかり言っても仕方ないのでとりあえず階段を降りてみる。因みに、この神殿内は全て海水に浸かっている。当然っちゃ当然かもしれないが、ダンジョン内くらいは空気のある場所があってもいいと思うんだが。
まあ、魔王城の第一層に水中エリアを作った俺には何もいう資格はないか。
下の部屋は水族館のようだった。色んな種類の魚が優雅に泳いでおり、俺を見つけ次第襲ってきた。
「え?」
ガブッ、ガブ、ガブガブガブガブガブガブ
気づけば俺は全身魚に噛まれた、なんとも変な人になってしまった。物理無効があることによってか視覚情報では噛まれているということは分かっても、感覚としては全く噛まれていない。これは一体どういう状況なのだろうか?
まあ、とりあえず、
「海馬ー」
海の中と言ったらコイツだろう。陸上でももちろん強いが水中、しかも海の中ともなればコイツの右に出るものはいない。というわけで、
『海馬ー、ちょっと俺の体を掃除してくれないか? ついでにこの部屋も。ちょうどお腹空いてたろ? ほらご飯の時間だ』
『か、かしこまりました? では失礼致します』
海馬は少し戸惑っているようだったが、ちゃんと俺の体の掃除を始めてくれた。だが、こうしてみるとなんだが海馬が小判鮫のように見えてくるな。体格的には絶対的に逆なのだろうが、役割としてその状況になってしまっている。
まあ、海馬は確か九重魔鮫龍だったから間違ってはないだろう。
そんなこんなで口が九個もある海馬はあっという間にこの空間全ての魚を平らげてしまった。どうやら本人は久しぶりに魚を食べることができて満足そうだった。
そういえば魚を食べさせたことなんてなかったな。日頃の食糧とかどうしているんだろうか? まあ、今回で沢山魚を食べることができるだろうから、是非とも食い溜めしてもらいたい。
ってか、海底神殿、海馬さえいれば余裕でクリアできるんじゃね? 俺、帰っていいかな?
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