第962話 海の底
俺がメガネくんに指示された場所へ向かうと、そこは大海原のど真ん中だった。
本来ならば、陸にある洞窟から少しずつ地道に進んでいって、やっとの思い出到着できるらしい。だが、メガネくんは「陛下なら直でいけると思いますよ?」と言われ、あれよあれよという間に俺は海の上に立っていた。
チラリと下を見てもそこは群青色に染まる海が広がるだけで到底海底神殿があるとは思えない。いや、流石にあるんだろうが、あるとは思えないほど海が凪いでいるのだ。逆にこれが嵐の前の静けさ、なのかもしれないが。
「うし、じゃあいきますか」
俺は一人、誰にしゃべるでもなく独りごち、海に向かってダイブした。目を開けると、そこには海面からは想像もつかなかった綺麗な光景が広がっていた。
頭上から注ぐ太陽の光がとても神秘的で、海中の珊瑚礁や小魚たちがとても彩り豊かで目を奪われる。こりゃ、現実世界でもみんなダイビングするわけだ。何時間でもいられると思うほど美しい。
俺は体のどこにも力を入れずにただただ海の中を揺蕩っていた。波に運ばれるがままに、ゆらりゆらりと揺れながら小魚を見つめていた。遠くの方にはウミガメも見えるぞ。現実では当然見たことないから見ることができて嬉しい。
他にも、サメやウツボ、チョウチンアンコウにタコ、そこにはなんでもいた。いつまでも、いつまでもここにいたい、そう思わせるほど俺の心は満たされて、もう何も考えられないくらい頭がポワポワしていた。こんな生活も悪くはな
ーーースキル【快楽無効】を獲得しました。
「え?」
俺はそのアナウンスを聞いて夢から醒めるように思考がクリアになった。そして俺はどこか分からない暗い深海の中にいた。
俺は一体何をしていたんだ? なんだこんなに流されてたんだ? 確か、俺は海に入って海が綺麗だなー大きいなーなんて思っていた。そこから……
もしかしたら、正規ルートで海底神殿に入ろうとしない奴らにはこうやって快楽を無理やり与えて溺死させるようにしているのかもしれない。じゃなきゃ快楽無効を手に入れた理由がつかない。
本当は溺死するはずのところを、俺は溺死しないから生き残って偽の快楽を受け続け、結果的に耐性を得てしまったということか。うーん、これは想定外すぎるな。
メガネくんも流石にこの情報は仕入れていなかったのだろう。軽いノリで来てしまったが一歩間違えれば危ういところだった。
まあ、それを含めて俺ならいけるでしょ、ってことだったのかもしれない。
気を取り直して当たりを見渡してみるが、暗すぎて何もみえたもんじゃない。
「【闇眼】」
スキルを使うとぼんやりと見え始めたが、海中は地上の時とは勝手が違うのかはっきりとは見えなかった。
だが、俺にはもう一つ使えるスキルがあるのだ。
「【叡智啓蒙】」
これを使うと見えないものが見えてくる。隠されているものも、隠されている、という情報が分かるのだ。そしてその情報を頼りに闇眼で見えるようになった視界で海を泳いでいると……
「びぶゔぉ(ビンゴ!)」
俺は海底に眠る大きな神殿を発見した。
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