第960話 空白の時間
ぶ、物理無効?
【物理無効】‥物理的干渉を受け付けなくなり、物理現象によるダメージを無効化する。
あー、俺ってばいよいよ人間を卒業するんだ。物理攻撃無効も大概だと思ってたけど、まさか物理そのものが無効になってしまうとはな。
というか、物理無効ってもはや日本語おかしくないか大丈夫か? まあいいならいいんだけどさ。
あと、物理的干渉ってなんだ? 「干渉」もよく考えてみたら分からないし、俺どうなっちゃうの?
まあ、いっか! 強くなったことには変わりないんだし、このまま物理無効の最強魔王として君臨すれば問題ないだろう。
試しに自分の顔を殴ってみると、もはや殴られていることすら分からないような、そんな感覚だ。もし自分じゃなかったら殴られていることにすら気づかない、そんなレベルかもしれない。
あれ? そういえば俺はなんで死にまくってたんだっけか?
……そうだ、人間プレイヤー共に分からせる為だったよな。それにしては予想以上に強くなりすぎてしまった感があるのだが。まあ、誤差の範疇ということにしよう。
そして、魔物プレイヤーの様子はどんな感じだろうか。しっかりレベル上げはできているだろうか? まあ実際のところまだ一日も経っていないから気長に待っておこう。
運営の返事はっと、、、お、やってくれるみたいだ。人間の街を巡る攻防戦、みたいなイベントにしてくれるらしい。ただ、少し時間がかかるそうなのでもうちょっと待ってほしいとも言われた。
そうだよな、流石にお願いします分かりましたで直ぐにできるもんじゃないよな。
なら書き忘れてた要望も追加しよっと。俺、NPCを殺したくはないからそこだけなんとなりませんかってな。まあ、こちら側が魔物プレイヤーに注意させればいいんだろうけど、それでも限界はあるだろうし、熱くなっている時に相手がNPCかプレイヤーかなんて判別つかないだろ。
んーでも更に時間が開くことになってしまったな。何をしようか?
これ以上、死んで強くなってもだなーって感じだし、そうだ。こういう時はペットと戯れよう、ほら癒しって大切だろう? 独り身には獣の癒しが刺さるんだこれが。
俺は魔王城の自室に戻り、ペットを呼び出した。
『おーいもう全員集合ー』
おっと、全員呼ぶとなるといくら魔王の自室が広いと言えど流石に手狭になるな。ってか、半分以上を海馬が占めてるんだが。だが、こうして近くで見るとびっしりと鱗が敷き詰められてるんだな。……綺麗だ。
透き通った水色に所々光が反射して虹色になっている。南国のビーチをゼリーにしたような、そんな色だ。しかも、匂いを嗅いでも生臭くない。体はひんやりしていて夏にはぴったりだな。ま、今は冬だけど。
海馬の全身をじっくり見たのを皮切りに俺は従魔を初めてじっくり観察してみた。
ハーゲンは一時期キメラになっていたこともあったが今ではすっかりただのハゲワシになっており、どこか愛おしさすら感じる愛くるしいハゲフォルムだ。コイツはなんだかんだで頼れる存在だからな、これからもしっかりと活躍して欲しい。
そして骨骨部隊か。スカルボーンアシュラ、最初は骨だったけど今となっては骨感はどこに行ったのっていうくらい立派に有能に育ってくれている。
アスカトルはペレは人化組だな。普通に強いし、有能。ってか、こうやって改めてみると二人ともイケメンだな。アスカトルは執事的なかっこよさでペレは破天荒な感じのイケメンだ。
そしてペット枠のアイスとゾム、言うことなしの癒しだ。デトは……いやデトもペット枠だな、うん。お前も可愛いぞ?
そして堕天使組、コイツらはこれからって感じだなしっかりと強くなって欲しい。天使にカチコミ行く時は頼りにしたいからな。
あと、忘れちゃいけないのが炎で作った最後の龍、ゼインだ。コイツに関してはただただかっこいいよなー。
物理無効でもほんのりあったかいのは従魔仕様なのか? まあ、物理無効だからって何も触れなくなるのは嫌だし、温度も温もりも感じたい。
むしろ、物理から隔絶されたからこそ俺は人肌、いやモン肌を感じたいのかもしれない。俺は皆に囲まれながらうとうととし始め、
「はっ!」
寝落ち防止の強制覚醒を施された。
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