第956話 メガネへの負担

 

「ファントムイリュージョニスト……」


 目の前のメガネく、いやストロ……いややっぱりメガネくんだな、は、自らの姿を確認しそう呟いた。


 しかし、その見た目は完全なる人間だった。


「あ、ありがとうございますっ!」


 一瞬進化できていないと思ったのだが、どうやら無事成功しているようだ。良かった。実はプレイヤーには行ったことがなかったから一抹の不安はあったんだよな。まあ、プレイヤーだからこそどう転んでも大丈夫だとは思っていたが。


「どんな感じだ? 見た目は全然変わっていないようだが」


「とても凄いですよ、陛下! 私はファントムイリュージョニストというものに生まれ変わったのですが、それによりさまざまなスキルを獲得することができました! まず一つ目は【擬変態】です、これは自らの姿を思いのままに変えることができて、周囲に溶け込むスキルのようです!」


 おーそれは強いな。デトが持っていた擬態の上位互換だろうか。情報を入手するために様々な場所に潜入するだろうが、その中で戦闘にならないというのはかなりのアドバンテージだろう。これからぜひ活用して欲しいな。


「次からは先程の擬変態をサポートするスキルで、敵の注意を別の方向に向ける為の【アテンショラバー】、もし見つかってしまった時のための【マインドラバー】、後はカメレオンの影響なのか、隠密行動や奇襲に補正が掛かるようになっていますね」


 ふむふむ、中々便利にそして強く仕上がっているな。うちで言うとアスカトルに全体的に似ている気がする。だがそれぞれ別の方向の隠密性だから競合せずに上手くやっていけるだろう。なんなら協力して情報を仕入れてくれても良いくらいだ。


 メガネくんは変装して、アスカトルは配下を産みまくって数で、みたいにな。


「じゃあ、これからも俺の為、いや魔王軍の為に情報を沢山仕入れてくれ」


「はい、この御恩一生忘れません! これからも忠誠を尽くして働かせてもらいます!」


 これでようやく心機一転新たに冒険を進めていくことができるだろう。悪魔の親王に天使もまだ手をつけていない。まだまだやることは無限にある。こんなところでのんびりしている暇はない。


「あ、そういえば陛下、」


「ん、どうした?」


「城の改築がだいぶ進みました。かなり良い感じに仕上がっていますので、せっかくなら一緒にどうですか?」


 あー、そういえばそんなのもあったな。これもメガネくんに任せっぱなしにしていたんだった。俺はどれだけあのメガネに負担をかけていたのだろうが。有能すぎるのも問題だが、城の改築を進めながら情報も集めていたなんて、一体どうなっているんだろうか?


「ここが一階になります! ここは入ってすぐですから初心者向けにしておりますね。とは言ってもそこそこ強いですが、城内に独自の生態系を作り、全滅させなければいくらでも狩って良い半永久システムを搭載しております!」


 ほーう、これで魔王国の住民たちが皆鍛錬できると言うことか。魔王国に人間を寄せ付けず、鎖国して魔物だけが着実と強くなっていけば、この国の力もかなりのものとなるだろう。


「これは中々の出来栄えだな、良くやった。この調子で漸次改築して行ってく


 バァンッ!


 突如、勢いよく城の扉が開かれた。そこには堕天使の……誰かが立っていた。


「ご主人様大変です! 城の周りに大勢の人間たちが!!」


 お、なんだその面白い展開は。俺に喧嘩を売ろうってか?

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