第955話 初邂逅


 俺は今、物凄い高揚感に襲われていた。何故なら俺の手元には全反射する無色透明な鱗がなんと五十個もあるからだ。


 これが如何程の物かは知らないが、単純にこれだけ集めたことに達成感を感じている。今この状態でこの鱗がガラクタだと言われても全く動じない自信がある。


 むしろガラクタ以下だと言われても俺はこれを死守するだろう。それくらいコレは思いのこもったものになってしまった。


 よし、じゃあ城に戻ってメガネくんを強化するか。


 ❇︎


 なんて思っていたのがつい数分前のことだ。ただ今、俺は猛烈に悩んでいた。


 それはこの鱗がとんでもない値打ちだと、メガネくんから知らされたからだ。


「へ、陛下これは余りにも私の身に余る物です。どうか受け取ってください」


 おい、俺がケチだから悩んでると思ってるだろ。そうじゃない、余りにレアアイテム過ぎてメガネくんが受け取ろうとしてくれないのだ。


 そもそもメガネくんの為に用意したのに断られるとシンプルに悲しいんだが。


「だから言ってるだろ、コレはあと四十個以上あるって、だから心配せずに受け取ってくれ。良質な情報を得るには時に金も必要だろう?」


「陛下がそうおっしゃるのなら……」


 さっきからそうだと言ってるだろ全くもう。これからはもう、少しでも遠慮したら即刻不敬罪にしてやろうか?


「遠慮は本当にしなくていいからな? だってほら鎌倉幕府だっけ? ご、ごけ……ごーごけ? ごけしょはっと??」


「も、もしかしてですが、御家人の御恩と奉公でしょうか?」


「おーそうそうそれそれ! だから頑張った分はちゃんと褒美があっていいんだぞ!」


「ありがとうございます、そういうことならありがたく頂戴したいと思います! もしかして徳政令なんかも出していただけます?」


「ん、なんだそれ。特製霊? 死霊魔術の強化版か?」


「いえ、なんでもありませんよ。それより、私の強化をしてくださるんですよね? 一体どうやってなさるのですか?」


「おーそうだったそうだった」


 もう途中からこの鱗をどうやって渡すか、ということしか考えていなかったからすっかり忘れてたぞ。まあ、強化についてはお手の物だ。もう何度も行ってきているからな。


「それについては俺に任せてくれ。じゃあ早速始めるぞ。【強制進化】」


 俺はスキルを発動しながら鱗を素材として選択した。ん、個数指定とか表示されなかったな。何個入れたんだろ……あれ、もしかして全部投入しちゃった??


 あれは俺が沢山持ってるからその内の一つくらいは全然使ってもいいよって話なだけで全部持っていかれるのは話がちが


「従人:ヒューマン、個体名:ストロンがファントムイリュージョニストに進化しました」


 はぁ、まじか。もうこうなった以上あの鱗の元は回収させてもらうからな。


 ってえ、なにその超かっこよくてめっちゃ強そうな種族は。ん、ってことは人間を正式にやめたってことなのか? 俺だってまだギリギリ人間なのに。


 ……ってかお前そんな名前だったっけ??

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