第954話 ヘルイェイル


「レベルアップしました」


 ふぅ、かなりレベルが上がってきたな。今のところ軽く二百体くらいは倒していて、経験値もそこそこ旨いのか順調にレベルが上がってきている。


 ただ、カメレオンが一向に現れる気配がない。


 本当にここに出るんだろうなメガネくんよ。もう二百も倒してるんだぞ? いやまだまだ足りないだけっていう可能性は全然あるだろうが、それにしても少しハード過ぎないか? そんなにカメレオンってレアなのか?


 ……まあ、レアか。現実世界では一回たりとも見たことないからな。


 でも、一回デトの同居人探しの時に見つけた気がするんだが、そいつとはまた別なのか? もし一緒ならデトの階層から引っ張ってきたいんだが……流石にダメか。


 はぁ、じゃあもうひと頑張りしますか!


 ❇︎


「ぐぁあああああああ!!! でない、でないぞ!!」


 どうなってるんだ、ここの確率は! 絶対に絞られてるだろ! もう五百を超えて千以上倒したぞ? それなのに足りないっていうのか?


 ここまできたらメガネくんに聞くのもなんか負けた気がするし最後までやり遂げたい。アクロバット飛行でメガネくんにいじわるしてしまったのは事実だからな、せめて成果を持って帰りたい。


 くそ、条件さえ分かれば……


 ん、待てよ。条件さえって言っても千体も倒したら流石にどんな条件でも大抵クリアしてるんじゃないか?


 もしかして、条件はとっくにクリアしていて俺がただカメレオンを見つけられてないだけだとしたら? カメレオンはそれこそ擬態する生き物だ。


 俺が狩まくってるからといってわざわざ自分の方からノコノコやってくるとは思えない。当然の様に隠れているはずだ。ならば俺のやることは一つしかない。


「【叡智啓蒙】」


 俺はこの森全体へと意識を拡張させた。すると、そこには明らかに今まで戦ってきた相手とは別の反応が存在した。しかも、複数。


 いくらカメレオンといえど、見た目は隠せても気配までは隠せないようだな。これぞ姿隠して気を隠さず、だな。


 あれ、複数いるってことはカメレオンの出現条件を複数回クリアしてるってことか? くそ、もうちょっと早く叡智啓蒙を使っておけば良かったぜ。


 まあ見つかったことだしちゃちゃっと倒しますか。擬態にステータス全ブッパしてるから倒すのも楽だろうよ。


〈Lv.220 スニーキングヘルイェイル〉


 ん、なんから強そうな名前だな。名前にヘルって入ってるしもしかしたら強いかもしれないし、最悪地獄の使者って言う可能性も


「キェ……」


 無かった。無茶苦茶弱かった。なんならワンパンで死んじゃった。んー、これじゃああまりに呆気なさすぎるから全員倒しておくか。素材の量を増やすことでも強化幅は大きくなるはずだ。


 ❇︎


「キェ……」


 俺の反応にあった最後のカメレオン、スニーキングヘルイェイルをポリゴンの欠片にしてしまうと、俺の手元には一つの素材が残った。


「全反射する無色透明な鱗?」


 なんだこのクソ長ったるい名前は。恐らくあのカメレオンの素材なんだろうが、こんなアイテム名見たことないぞ?


 もしかしてこれはドラゴンでいう逆鱗や宝玉クラスのレアアイテムなのかもしれない。メガネくんに見せて話を聞こう。


 いや、待てよ。もしかしたらこれは全然レアじゃないかもしれない。なんならこれはマストで必要なものの可能性もある。


 だったらこの鱗を乱獲すれば流石に文句は言われないだろう。レアアイテムだったら量用意できるのは凄いし、レアじゃなくても量で誤魔化せる。


「ふぅー……」


 こっから第二ラウンドか。おいカメレオン、いつまで隠れてるつもりだ? 俺が全員火炙りにして食ってやるからな!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る