第951話 過酷な環境


「何か欲しいものはあるか?」


 俺は今、メガネくんを城に呼んで尋問していた。俺は彼の業績に対して何かしらの褒美を与えねばならないのだ。これは男と男の負けられない戦いである。


「欲しいもの、ですか……私は魔王陛下の元で働けているだけで幸せですのでこれ以上何も必要ありません」


 さっきからずっとこの調子なのだ。これは俺に遠慮している、っていうことなのだろうか。


 俺は他のプレイヤーに比べたらそこそこ金は持っていると思うし、アイテムや武器、防具も豊富、何ならすぐに作ったり持ってきたりするというのに、ここまでくると遠慮することは罪だぞ?


「どうしてもないというのか? もしお前が褒美を断ると言うのならば、それは私をタダ働きさせる魔王にすると言うことだぞ? そんな魔王でいいのか?」


「いえ、それは絶対にダメです」


「ならば褒美を考えよ」


 俺は一体ゲームで何をしているのだろうか? なんで説教じみたことをしてるんだ? こう言うのは相手の為を思ってするもんだろ? こんな独善的な説教があってたまるか。


「分かりました。では魔王様、私に力をいただけないでしょうか?」


「力……?」


「はい。情報を集める際、時には危険な場所に赴くこともあります。そんな時に力があればそんな困難も乗り越えられ、より良い情報を提供できるようになるかと思います」


 ふむふむ、力か。


「それに、私はいかにも貧弱そうな見た目をしておりますので、足元を見られる場合も多いです。ですから、そんな時にも強そうな見た目だけあれば全然違うでしょうし、いざって場面でも臆することなく立ち向かうことができるかと思います」


「……」


 まさか、こんなに情報を集めることが大変だったとは……俺はなんの気無しにメガネくんに情報の収集と偽情報の流布などを頼んでいるが、ここまで重労働をしているとは思わなかった。


 地道な仕事の積み重ねの上澄みだけを俺はもらっていたんだな、と思うと申し訳なさすら感じてしまう。これからはもっともっと手厚くサポートをしていかなければならないな。


「も、申し訳ありません! 無茶なことを言いましたよね、ごめんなさい! 私には褒美なんて必要ありません! 陛下の力になれているということだけで十分


「落ち着け。私を誰だと思っている。其方を強くすることなど、造作もないことだ。そんなことよりも貴様がそんな過酷な環境で情報を集めてくれていたことに胸を打たれていたのだ。これからはこのことに限らず、何か必要なもの、ことがあればすぐに言うのだ。情報は力だ、それを心得た上で仕事に励むのだ」


「まっ、魔王陛下……! ありがとうございます!」


 不味い、ちょっとクサイこと言いすぎたか? それにこれは前からだが、人称がブレブレすぎる。一人称も二人称も決まってなくてその場のノリで適当に言っちゃってるから振り返ると多分恐ろしいことになってそうだ。


 まあ、言葉は取り消せないがそれと同時に履歴を遡ることもできない。だから気にしたら、負けだな。


「さて、ではどんな風に強くするかだな。どのように強くして欲しい? 好きな魔物はいるか?」


「好きな魔物ですか……カメレオン、とか?」


 カメレオン!? それ多分モンスターじゃなくてただの動物、、、

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