第947話 頭を使え
「【吸血】、【鋭俊剛血】」
違う、また外れだ。今回はキマイラだった。そもそもなんでライオンとヤギと蛇が合体するんだよ。お前らはどんな世界線で生きてたんだ? 俺なら絶対にヤギじゃなくてペガサスとかにするんだが。
「【
はー、今回も違うか。今回はフェンリル、残念だ。
「【一花繚乱】」
だぁああああ、なんで当たりを引けないんだ! 今回はジャガイモ人間! くそ、一体この洞窟のボスはどういう基準で選出されてるんだ? フェンリルからジャガイモ人間とか振れ幅ありすぎだろ!
「【暗黒魔法】、ブラックサーキュレーション」
今回はデュラハンか。本当になんの法則性もなくボスが選ばれている気がしてきたんだが……
ん、待てよ。ってことはもしかして石化の魔眼を持っている輩もランダム出現、ってことはないよな? もしそうであるなら人海戦術ができない俺は相当不利になるぞ?
いや、ここは逆に考えるべきか。今まで石化の魔眼がまだ出てないってことは運さえ良ければ引ける可能性はあるってことだ。後は試行回数を増やすだけだ。
「【斬法十四手】!」
そういえば俺って運なんて無かったな。ビンゴ大会とかでマトモに当たったことなんてないし、学校の席替えも真ん中よりも後ろになったことがない。今思うと人生の至る瞬間で常にババを引いてきた人生だった気がする。
でも、それが死ぬほど恨めしいかって言われるとそうでもない。だって、その状況にならなきゃ得られなかったものだってたくさんあったはずだから。
例えば、この忍耐力とかな。俺は当たりを引くまで諦めねーぞ! 「……【鴉狼一夜】」
おい、なんだよ二回目のゴブリンキングって。洞窟さんよネタ切れですか? それとも手抜きですか? 石化の魔眼を出さないのは百歩譲ってもいいとして被りはダメだろ、被りは!
あー不味い。なんだか出る気がしないんだが。段々とイライラしてきて、自我なんてないはずの洞窟にまで当たっている始末だ。これは流石に一旦仕切り直した方が……
ザッ、ザッ
ん!? ちょっと待て今、足音が聞こえなかったか? もしかしてここに人が入って来たのか? 不味い、俺は人がいない洞窟を選んで攻略して宝絶対にプレイヤーには遭遇しないと思っていたのだが、まさかのそっちの方からやってくるとは。
そもそもこの状態で他人に会うこと自体気まずいのだが、今、格好はゴリゴリのプレイヤー装備だ。このままでは他人に見られてしまう。どうにかして変装をしたいのだが、俺の手元には初期装備くらいしかない。初期装備でここにいたら逆に怪しまれてしまう。
くっ、何かないのか何か。どんどんと足音が近づいてる。あっ、これは……!
「あれ? もしかして先客さんですか? あちゃーこれは被っちゃいましたね残念! ところでお一人なんですか? お強いんですね!」
「……」
その一向はパーティを組んでいた。男一人女性二人のけしからんパーティだ。俺はというと元々着ていた悪魔の装備の半分を初期装備にし、頭にはゴブリンの頭を被っていた。これでなんとか相手の意識に引っかかることはなかったようだ。
俺はペコリとお辞儀をして会話を終了させようとする。長居すればするだけリスクは高まるだけだからな。
「あのー、もしよかったら一緒に行動しませんか?」
はぁ?
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