第946話 頭と体


 は、なんでこんなところにゴブリンキングがいるんだ? まさかこいつが石化の魔眼を持ってるっていうのか? 持っているかどうか確かめるためにも一旦何もせずに攻撃を食らってみるか。


「……【天叢雲剣】」


 よっわ、ってか雑魚じゃんコイツ。せっかく攻撃を食らってあげたのに石化の魔眼もくれないしアホみたいに殴ってくるだけだった。あと、どうしようもなく顔がウザ……タイプじゃなかったからつい倒してしまった。


 だって、あんな煽ってくるような顔されたら誰でも腹立つだろう? 俺はまだ何にもしてなかったっていうのにさ。喧嘩を売られた以上利子付きで買うしかないだろう。


 そして、倒した結果俺はゴブリンキングの骸骨、というものを入手したのだが、それだけだった。もちろん石化の魔眼なんてもらえるはずもなかった。


 麻痺の魔眼はアスカトルからもらったんだから、少なくとも俺の従魔になる前のアスカトルより強い敵じゃないと持っていないと考えるべきだよな。


 ん、でも洞窟はここで終わっている。なんでだ? 今のが中ボスってことだと思っていたんだが……あれ?


 ここであってるよな、石化の魔眼の場所。メガネくんが間違えたのか? 流石にそんなヘマはしないと思うが一応確認してみるか? いや、ここはメガネくんを信じよう、彼には悪魔の城を見つけてもらわないといけないし、何かあってすぐ頼ってたらどっちが上司か分かんなくなるからな。


 んー、でもこの洞窟はこれ以上先にはいけないしボスと思われる雑魚も倒したしな。ここにいないことは確定だな。もしかしてシンプルに洞窟を間違えたのか? 洞窟は別に一つの国に一つまでと制限があるわけじゃない。


 他の場所に見落としている洞窟があるかも知れない。とりあえず外に出て探してみよう。


 俺はすぐさま外に出て、再びハーゲンに乗り上空から国を、街を見下ろしてみた。すると、俺の視界には衝撃的な光景が広がっていた。


 そう、洞窟と思われるものが沢山、いや無数に存在していたのだ。どこを見ても洞窟が目に留まり、もはやコンビニかって勢いで存在している。俺がただ今ゴブリンキングを倒した洞窟も見事にその中の一つだった。


 くそ、もうちょっと冷静になって周りを見渡していればこんなことにはならなかったはずなのに……洞窟は大量に存在しないという固定概念に囚われていた。


 ってか洞窟多すぎじゃないか? ここまでくるともはや地盤沈下とかが気になってくるんだが。まあ、ファンタジーの世界ならなんでもアリか。


 よくよく見てみると確かに洞窟の周りにはプレイヤーがいた。皆、俺と同様に石化の魔眼の情報を入手してここまで来たのだろうが、本命を見つけることができずに洞窟を巡っているようだ。


 俺もこうなるところだったのか、むしろ一つ目で気づけてよかったな。


 だが、俺も彼らと同じように洞窟巡りはしたくない。魔王ってことがバレることはなくても、石化の魔眼を入手したプレイヤーと認知されたくないのだ。仮にバレたとしたらそこから芋蔓式に俺のことが公に出るかも知れない。それはなんとしてでも避けたいからな。


 俺は頂上決定戦とかクラン抗争である程度顔はバレているだろうし、油断は禁物だ。もしプレイヤーに遭遇した時のことも考えておいた方がいいだろう。


 問題は、どうやって石化の魔眼の持ち主を見つけるか、だな。兎にも角にも見つけなければ話にならない。


 当たりは完全にランダムなのだろうか。いや、それは考える必要はないか、だってもしそうなら人海戦術を取っているプレイヤーの方に明らかに分がある。


 ならば俺は頭を使ってピンポイントで当たりを引かなければならない。何か法則性は、手がかりはないか?


「……」


 二分ほど俺は上空で頭を悩ませた結果、俺は頭を使うよりも体を動かした方が早い、という結論に至った。


 よし、今からまだクリアされていない洞窟を俺が全部虱潰しにクリアしてやる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る