第941話 情報攻撃手段
霊体が情報そのものだとしら、それを攻撃するにはどうすればいいんだ? 情報を攻撃する、っていうのはどういうことなんだ? 情報は情報じゃないのか?
「ぐはっ!」
やべ、分割思考が操作してる俺が攻撃を食らった。避けるのに専念しているのにそれでもダメージを受けたってことは相手の精度が上がってきたってことだ。これは悠長に構えている暇はないな。早く完成させなければ……!
よし一旦落ち着いて分かりやすく置き換えて考えてみよう。霊体は情報だ。ならば俺の霊体は俺の情報ってことになる。つまりは俺のことってことだよな。例えば身長、体重、年齢とかか? もっと細く見れば俺の細胞一つ一つの情報まで霊体って言えるかも知れない。
じゃあそれを攻撃するってどういうことだ? その細かくなった細胞を攻撃したとしてもそれは俺の体を攻撃しただけで霊体を攻撃したことにはならないはずだ。だって情報には攻撃してないからだ。
そもそも情報を攻撃するっておかしくないか? 情報はもう既に存在するものであってそれをどうこうするものでは無いだろう。じゃあどうする? 攻撃対象は相変わらず霊体、でも霊体である情報は攻撃できない。
「うぐっ!」
不味いマズイまずい不味い! 俺の限界がもうすぐそこまできている。何とか自動回復で持ち堪えているがそれが追いつかなくなった瞬間死だ。考えろ考えろ、そしてイメージしろ、俺の中で掴めればそれでいんだ。じゃあ、情報を攻撃するにはどうすればいい? でも攻撃しろって言ってもできないもんはできないだろ!
「っ……!」
死ぬ、このままじゃ本当に死ぬ! もう死にたいくらいなんだが? ってか、分割思考してるのにこっちにまで痛みを感じてるって相当不味いんじゃないか?
ん、待てよ。この痛みも情報に入るのか? それってどういう状態だ? 俺の霊体に痛みが加えられたんじゃなくて俺の実体が殴られたことで「痛い」っていう情報が書き加えられたってことじゃないか?
はっ! そうか、情報って攻撃するもんじゃなくて上書きするものなのか!
攻撃するっていう概念じゃなくて相手の情報に余計なものを足せば結果的にそれが攻撃になるってことだな? じゃあ、相手の霊体に情報を加えられるスキル、いや加えるだけじゃなくて除いたり消したりすることができるスキルを作ればいい!
「【仙術】、技生成!」
ーーースキル【霊体改編】を獲得しました。
よし、これで親王に攻撃できるはずだ。バトンタッチ! ……って別に言わなくても交代できるよな。なんか気分舞い上がってたわ。
改めて思考をクリアにして親王に向き直ると禍々しい化け物がそこにいた。あれ、なんかさっきとフォルム違くないか? 俺が避けまくってたから第二形態にでもなったのか? でも、不思議と先ほどより絶望感はない。むしろどんな効果が出るのか楽しみだ。
「【霊体改編】! 敵の霊体にとんでもない痛みの情報を加える」
「グハッ! き、貴様一体この私に何をした!」
おー効いてる効いてる! この調子だな。やろうと思えば一瞬で倒せるかもだけど、せっかくだから性能テストも兼ねていたぶりますか!
「次はー、敵の眼球の構成情報を削除」
「なっ、何も見えぬぞ! き、貴様何をした! さっさと戻せ!」
「おー、ちゃんと情報を消すこともできると。じゃあ、仕上げに敵の魂を削除!」
「……」
その瞬間、今まで色んな意味で煩かった親王悪魔が、糸の切れた人形のように崩れ落ちてしまった。むしろ今まで電池駆動していて、その電力が切れた、と言われた方が自然なくらいに。
「……」
え、このスキルぶっ壊れじゃね?
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