第942話 改編の代償


「ふぅ……」


 やっと終わったか。終わり方はあまりにも呆気なかったな。なんか色々なことがありすぎてとても時間が長く感じられたし、疲れも非常に溜まっている。


 目の前にはフィギュアのようになってしまった親王の姿があった。これはこのまま放置してもいいが、親王の抜け殻だ、絶対に何かしらどこかで使い道があると踏んでいる。だからこれは俺が預かっておことも思う。問題は収納できるかどうかだが……


「おっ」


 アイテムボックスに無事収納することができた。それにしてもさっきまでは命のやり取りをしていた相手が、死んでものになって俺の手元にある、っていうのはどこか不思議な気分だ。


 生き物も死んでしまってはただのオブジェクト化してしまうなんて少し寂しいよな。この寂しさを紛らわす為に人々は霊体という存在そ作り上げたのかも知れないな。


 あ、そうだ。そういえばまだ霊体改編のスキル効果を見ていなかったな。どれどれ……


【霊体改編】‥自らの生命エネルギーを使用して任意の霊体の構成情報を改編する。


 ん? 自らの生命エネルギーを使用して? ちょ、ちょっと待ってくれ生命エネルギーってなんだ? しかもなんで勝手に代償なんて組み込んでいるんだ? 俺はそんなもの設定した覚えはないぞ?


 ん、ん!? ってことは俺、親王を倒すのに莫大な生命エネルギーを使っているってことだよな? そこらへんのスライムじゃなくて悪魔の親王だぞ?


 こ、これは少しばかりやばいかも知れない。


 俺の生命エネルギーがどれだけあるかは分からないが、とてつもない量を使ったのは間違いない。それに、エネルギーとあるように、これがなくなったらそこに待っているのは確実なる死だ。


 どうしよう、生命エネルギーってどうやったら補充できるんだ? どこかに売っていないだろうか?


「あのー……」


「なんだっ!?」


 俺はとても不安に陥っていたのか、恐る恐る話しかけてきた公爵悪魔に対して物凄い形相で返事を返してしまった。流石にこれは可哀想だと直ぐに正気に戻ったが、公爵悪魔はそうでは無かったようで。


「ひっ! お、お許しください! どうか、どうか命だけは……!」


 こっちがびっくりするくらい怯えていた。というか、初対面の時のあの威張りようはどこに行ったのだろうか。人も悪魔も変わるんだな。


「すまん、それでどうしたんだ?」


「はい。いえ、まさか本当に親王を倒されると思っても見なかったので、改めて私の忠誠を貴方様に捧げようと思いまして……」


 ふーん、俺の強さを知って軍門に降ろうというわけか。確かにモンスター、しかも悪魔は力こそ正義、と思っていてもなんらおかしくはないからな。


 ただ、こちらとしても元敵を易々と仲間にするわけにはいかない。あと、ちょっと従魔も増えすぎて手狭になってきている、っていうのもあって服従はしないでおこうと思う。


 適当に遊ばせといて適当に俺の役に立ってくれたらそれでいい。


「あ、そういえばだけどお前、生命エネルギーについて何か知ってるか?」

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