第928話 馬車ゴブ
ゴブリンがPK集団を全滅させた後、俺は魔王城まで持ち帰ってあげた。そこまでしなくてもいいんじゃないか、という考えが一瞬過ったが、それはそれで酷すぎるなと思い、ここまで運んできたのだ。
それにしても、ここまでゴブリンが強くなっているとは思いもしなかったな。そして、皮膚の色が変わったと言うことは間違いなく進化しているといことだ、進化前であれだけ強かったのだから、今は相当強くなっているはずだ。
それこそ堕天使たちといい勝負をするかもしれない。やっぱりプレイヤーの進化というのは速いんだな。俺もうかうかしてられないし、従魔が何体もいるんだから全員しっかりと強化しないと、誰か一人でもプレイヤーに劣ればそこが穴になってしまう。
そう、魔王軍最弱の堕天使といえども、だ。
「うっ、ここは……?」
お、ついに目覚めたみたいだな。俺がログアウトする前までに目覚めてくれてよかったぜ。俺がログアウトする時には流石に城の外に放り出さないとだったからな。
❇︎
その後カクカクしかじかあったのだが、どうやらゴブリンは自分が戦っていた最中の記憶がないらしい。それでてっきり負けたと思ってたらしいんだが、俺が訂正してやった。そして、頑張ったご褒美をやろうと思ったんだが……
「だて、いや、流石に、んー、だ……」
さっきからずっとこの調子なんだ。褒美に何が欲しいと聞くと、「だて」か、「だ」しか言わないのだ。盾、なら全然買うし、爺さんが作ってくれるだろうけど、だて、だからなー。だ、に関してはもう意味が分からない。
もう、これ以上長引くようだったら俺から無理矢理にでも褒美を決めてやろう。俺も時間を取られるのは好きじゃないし、思考の迷路から開放してあげるのも上司の務めだろう?
「じゃあ、もう
「だ、だて、だてん……ぶ、ぶぶ武器でお願いします!!」
なるほど、打点の高い武器が欲しかったんだな。でも、それならなぜそうと言わなかったんだろうか? 打点の言葉が思い浮かばなかったのか? 普通に強い武器とかでも良かっただろうに。まあ、無事決まったのなら良かったな。俺も武器をプレゼントしようと思ってたしちょうど良かった。
「分かった、では貴様には業物の武器を用意してやろう。心して待っておくのだ」
にしても、魔王口調が未だに慣れないなー。メガネくんには俺がプレイヤーってばれているからまだいんだが、このゴブリンは俺のことをNPCと思っているはずだ。だから余りヘマをしないようにしなきゃなんだが……
気を抜くとすぐにボロが出てしまう。もういっそのこと魔王口調パッケージみたいなものを装備したいんだが。
「あ、ありがとうございます……」
ん、なんだか不服そうだな。俺の言葉が気に入らなかったのか? それとも業物が嫌なのか? 業物じゃなくて打点が高い武器じゃなきゃダメなのか?
というか、そういえば俺ってこのゴブリンから嫌われてるんだっけか? もしかして俺から褒美をもらうこと自体嫌だとか言わねーよな?
よし、そっちがその気なら俺も少し意地悪させてもらおうか。
「ゴブリンよ、今からこの魔王国に住まうモンスターを集めてくるのだ。今の貴様ならばできるはずだ、必ず成し遂げよ」
ふっ、俺の建国の為に馬車馬のごとく働いてもらうぜ?
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