第927話 脱却と褒美


「うっ、ここは……?」


 俺が目を開けるとそこは魔王城のベッド、ではなくベッドが見える床だった。そうか、俺はあの時PK集団と戦わされて一人は倒して、、、その後の記憶が全く無いな。


 でもここにいると言うことは負けたってことなのか。くそ、堕天使様にカッコ良い姿を見せるつもりが情けない姿を見せてしまったな。始まる前はあんなに意気込んでいたのに、負けるとは情けないな。結局魔王様に俺のケツを拭いてもらったんだな。


 俺がゆっくりと体を起こそうとすると、魔王様から声をかけてくださった。


「おう、やっと気が付いたか。調子はどうだ?」


「はい、体調はバッチリです。ただ……」


「ただ?」


「ただ、負けてしまったことが悔やまれます。折角、陛下から素晴らしい機会を頂いたと言うのにもかかわらず、私は無駄にしてしまって。本当に申し訳ないです、期待を裏切ってしまって」


 俺は正直に頭を下げた。堕天使様にカッコいいところを見せられなかったことに比べればそうでもないが、魔王様への感謝とそれより大きな申し訳なさは本物だ。もしかしたらこれからはもう関わってもらえないかもしれない。


 だからこそ、ここでしっかりと頭を下げることによって少しでも心象を良くしないといけないのだ。


「ん、何言ってるんだ?」


「へ?」


「お前、負けてないぞ? というか、ビビるくらい倒しまくってたぞ? それこそ俺らが介入する暇もないくらいあっという間に全滅させてたし。ほら、お前の体を見てみろ」


 そう言われて俺は自分の手を、腕を、足を見てみた。


「えっ!?」


 そこにはいつものきったない緑色の皮膚はなく、血塗られた黒、いや黒みがかった血のような色があった。これが、俺の皮膚ってことなのか?


「どうやら、お前が生物としての格を超越したいみたいだな、良くやった。俺もここまで成長しているとは思っていなかった、素晴らしい成果だおめでとう」


 ポタッ


 いつの間にか、俺の目から何かが溢れ落ちてきた。報われた、俺は報われたのだ。今までの過酷な人生、いやゴブ生が、屈辱が、今日で終わりなんだ。俺はとうとう次のステップへと歩みを進めたのだ!


 そう、俺は天使様に微笑まれて更に拍手された! これはまだまだチャンスはあるってことだ!


 記憶を失った俺、ナイスだぞ! まさかPK集団を全滅させるなんてやるじゃないか! この調子で色んな敵を倒しまくったら次は直接お褒めの言葉をいただけるかもしれない。


 あぁ、魔王様の庇護下になって良かったー!


「……い、おい!」


「はい!」


「どうしたのか、気分悪いのか?」


「い、いえ大丈夫です。感激の余り言葉を失っておりました」


「そ、そうか。では今から貴様に褒美をやろう。今回素晴らしい活躍をした貴様は何を望む?」

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