第925話 手違いの鏖殺
引き続きに引き続きゴブリン視点です。
——————————————————
俺はやる気マックスの状態で目的地に到着した。道中は魔王様直々に送り届けてもらったのだが、初めての空の旅で失禁しかけていた。
俺高い所苦手なんだけど、天使様も飛ぶし魔王軍は空路しかないのか?
でも、そのおかげで緊張感よりも安心感が上回ってくれてる。コンディションは良好と言えるだろう。
「ん?」
そこには小さな小屋があった。しかし、PK集団は見当たらない。本当にこんな辺鄙な場所にいるのか? PKの奴らよりもよっぽど俺の方がお似合いだぞ?
「ここに後三十分もしたら集まってくるように仕向けておいた。後は人が来る度倒していけば良い、分かったな?」
「は、はい!」
ちょ、ちょっと待って。仕向けておいた、ってどういうことだ? 魔王様ってPK集団とも繋がってるのか? いや、まあ繋がっている可能性もなくはない、というかありそうだけど、そんなことアリなのか?
いやまあアリだから俺はここにいるんだろうけどさ。そして、後は人が来る度倒せって言うけど、そんなに簡単なことなのか? 天使様にレベル上げを手伝ってもらったから多少はレベル上がったけど、それでも俺はゴブリンだぞ? まるで倒せる気がしないのだが?
「よし、先ずは中に入ろう。中にはまだ誰もいない筈だから、そこで待ち伏せをするのだ」
「は、はい……」
なんか思ったよりも人間っぽい、というか魔王様らしくない作戦で少し驚いた。魔王様のことなら正面突破じゃ! とか言って正面からねじ伏せそうなものだが。まあ、あくまでも俺の為の修行だからイージーモードな作戦を考えてくれてるんだろうな。
そんなことを思いながら扉を開けると、
「「え?」」
そこには十名以上のプレイヤーが居た、と言うより待機していた。
あれ、魔王様の計画ではまだ集まるのには時間がかかるから中で待ち伏せをするって話だったよな? なのに、なんで?
魔王様の顔を見ると知らん顔をしている。それに気持ち焦っているように見える。というかさっき俺と一緒に驚いて無かったか?
だが、予想外の結果に驚いているのは俺たちだけじゃなかった。恐らく、PK集団と思われる人達も皆同様にポカンとしていた。そりゃ、急に魔王とゴブリンが入ってきたら驚くか。両者共に現状を理解する為の一瞬の空白が生まれた。
そして、先に動いたのはやっぱり我らが魔王だった。
「ゴブリン、やれ。躊躇なくだ。ダメージのことは気にするな」
でも、動かされたのは俺だった。おいおい、ダメージは気にするなって言われても相手は十人以上いるんだぞ? 相手がPK集団じゃ無くてもキツいって言うのにこの魔王は何を考えているんだ? どう考えても無理だろう。勝てる見込みが、道理がない。
はぁ、でもやるしかないのか。できない理由ばかり並べても仕方がない。そう、最悪の時は魔王様がついているんだ。その為に俺は魔王国へと入ったと言っても過言ではない。ならば全力で暴れるだけだ!
未だ状況が飲み込めていない相手に俺は魔王様の言いつけ通り、躊躇なく刃を一人の男の首に突き刺した。
だが、俺の武器は粗悪な剣、刃こぼれしまくりのオンボロ剣だ。それでも魔王様がそばにいてくださるだけで不思議と力が湧いてくる。なんでもできる気分になるのだ。
俺はそのまま何度も何度も首に刃を立て、遂には首を切断することに成功した。
そこからはもう記憶がなかった。
気が付けば俺は一人血の海に立ち、息を荒げていた。ふっと我に返り魔王様の方を見ると、少し驚いているような、満足しているような、そんな顔をしていた。
俺は、俺はクリアでき、た……のか?
バタっ
俺の意識はまたもや深い沼へと引きづり込まれてしまった。
「条件を達成しました、種族進化が行われます。ゴブリンからキラーゴブリンへと進化しました」
ーーー称号《人喰い小鬼》
称号《外道な進化》を獲得しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます