第924話 小鬼の奮闘志
引き続きゴブリン視点です。
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「ハァハァハァッ」
俺は空飛ぶ天使を見上げながら何とか魔王城まで辿り着いた。ずっと上を向いていたから首が痛いし、足元も疎かになって転びまくって体中が痛い。
全く、コレが愛の鞭ってことだな。
レジェンド漫画作品でも山を猛スピードで駆け降りる修行というものを行ってたし、天使様は俺を強くしようとしてくれたのだろう。
「……」
流石にコレには無理があるってのは俺でも分かる。体はゴブリンになったが、頭までゴブリンになったわけじゃないからな。天使様はまだ時じゃ無いのだ、このくらいでへこたれてたまるか。
それにしても魔王様は俺達に何をさせようとしているのだろうか。魔王城に効率の良い狩場があるわけでもないだろうに。
そんなこんなで謁見の間に入るとその奥に魔王様が鎮座していた。って、そりゃ当たり前か。魔王様に謁見する為の場所なんだからな。
「ふむ、来たか」
玉座に座っている魔王の威厳はいつもよりも数倍増しで感じられた。これがオーラ、これが覇気と呼ばれるものなのか、と痛感させられるほどの圧倒的存在感と威圧感、そして強者感を放っている。
俺もいつの日かこの力を手にしたいと思うのだが、到底無理だと思わせるような、そんなレベルだ。俺たちプレイヤーはこの世界の人たちとは比にならないくらいの成長スピードだが、それすらも凌駕してしまうこの魔王の力、尊敬せずにはいられないだろう。
「貴様には、一つの仕事をこなしてもらう。以前、言っていた人間への復讐を始めるのだ。まあ、最初ということもあって、いきなり人間共に喧嘩を売るのは不味いだろう。だから、人間殺しの集団を見つけてきた。貴様にはそれを潰してもらう」
人間殺しの集団って、ことはPK集団ってことか? え、まさかそれを俺一人で潰せって言ってるのこの人? いや確かに復讐したいとは言ったけどそれは魔王様に強くしてもらってからの話であってですね……
はいはい、どうせこれをクリアしたらその先に俺の強化が待ってるんですよね。何もしてないのにご褒美があるはずないですもんね。
「分かりました、全力を尽くします」
でも、それなら尚更天使様と一緒にいけて良かったな。正直俺一人じゃ勝てる未来が見えて無かったからな。天使様がいさえすれば人間如きに負けるはずがない。
「あ、そうだ。堕天使達の同行は許可するが基本的にお前一人で戦え。あくまで堕天使たちは補助だ分かったな?」
「え、」
堕天使? あの美しい天使様たちが堕天使? それ本当に言ってるのか? 俺が今まで天使だと思っていたのが本当は堕天使だった??
さ、さ、最高じゃねーか!
ってことは堕ちた存在ってことだろう? もっともっと堕ちてくれるかもしれないし、俺を堕としてくれるかもしれない。何より、天使なんかよりも断然ワンチャンスの可能性がありそうな響きだ! これは絶対に何がなんでも俺の勇姿を見せないとな!
「おい! どうした、聞いているのか?」
「はい! もちろんです! 全力で頑張らせていただきますっ!!」
俺の拳は、体は、闘志で満ち満ちていた。人間なんてぶっ飛ばしてやんよ!
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