第923話 小鬼の挑戦


「レベルアップしました」


 ふぅ、これでやっと二十レベル上がったな。天使様と一緒に狩りをしているおかげでとても安全に狩ることができているのだが、どうしても俺に入ってくる経験値が少なくなってしまうようだ。


 それでも天使様たちはできるだけ手を出さないようにしてくれて、俺の取り分を多くしようとしてくれている。やっぱり天使だよなー。


 そんな天使様たちの為にも俺はもっともっと強くならないといけない。よし、もっとテンポを上げていこ


「ゴブリンさん」


「はい!」


 テンポを上げようとした矢先、天使様に止められてしまった。もしかして、もう少し落ち着いて着実にレベリングをしろ、とでも言われるのだろうか。もし、何を言われても天使様の命とあらば全力で従うだけだ。


「魔王様からゴブリンさんに伝言をお預かりしました。レベルを爆上げできそうな狩場があるんだが、興味はあるか、とおっしゃっております。いかがでしょう?」


 レベルを爆上げできそうな狩場? そしてそこに興味があるかって? 無い訳ないだろ、っていうかこのゲームをしている人で興味が無い人なんているのか?そんな訳で俺は問答無用ではいと答えると、


「では、今から魔王城にお戻り下さい。私たちは別件がございますのでここでお別れしますね。では」


「え、あ、ちょっと待ってください!」


 俺はその時無意識に声を出していた。自分でもどうしてこんな行動に出ているのか理解が不能だったが、何故こうなったのかは、すぐさま理解できた。そう、もっと天使様と一緒にいたかったのだ。


「……どうされましたか?」


「あ、い、いやー」


 だけど改めてどうされたか聞かれると、自分の思っていることを直接言うのは気が憚られる。というかシンプルに恥ずかしい。


 何と言えば良いのだろうか。相手に引かれず、そしてきちんと思いを伝えるには。


 よし、隠そう。


 まだ正直思いを伝えるのは時期尚早だ。どう転んでも引かれるかもしれないし、危険だと距離を置かれるかもしれない。なんせ俺はまだただのゴブリンだからな。天使様と釣り合わないにも程がある。


 だからもっと俺が強くカッコ良くなった時に思いを伝えよう。


 それに折角魔王様に庇護してもらっている立場なのに、その方の部下にすぐさま手を出すなんて破廉恥だ。


 俺は魔王様にも多大なる恩を頂いているのだ。先ずは魔王様に少しでも恩返しをする所から始めよう。そうして少しずつ信用を得てからの話だ。


 でも一緒には行きたいから、


「魔王様のい、おっしゃる効率の良い狩場は私にとって難易度の高いものかもしれません。ですので、厚かましいとは思っておりますが、一緒にいけたらな、なんて思ったのですが……どうでしょう?」


「……わかりました。陛下に確認致しますね」


 うん、やっぱり即オッケーは貰えないよな。NPCだし物理的に親密度、好感度が足りないんだろうな。攻めなくて良かったぜ。


 でも逆に言えば親密度さえ上げればどうとでもなるということだ。となれば俺がやるべきことは魔王様にしっかり仕えて、天使様にカッコいい所を見せることだ。問題は、魔王様が許可してくれるかだが……


「ゴブリンさん、魔王様が寛大な心で許可してくださいました。では、向かいましょまうか」


 きたー!!


 もうこれから一生魔王様に付いていきます! 本気で頑張ります! よろしくお願いします!


「はい、向かいましょう!」


「では、私はお先に」


 そう言って翼を広げ天使は飛び立っていってしまった。


「……あぅ」


 好感度を高める道のりはまだまだ遠そうだ。

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