第921話 目を塞いで耳塞がず


 俺がギルドに指定された場所へ到着すると、そこには小さなアジト、いやアジトと言うか小屋があった。


 ん、これはどういうことだ? 巷でブイブイ言わせてる奴、いや、ザクザク殺してる奴らのアジトがこんなお粗末な場所なのか?


 こんな所で何をするっていうんだ?


 今までのアジトと呼ばれる場所は、盗んだり人を殺したりして手に入れた物を蓄える場所でもあった。


 それなのに、ここはそんな物が置いてある様な場所には到底見えない。それどころか誰でも入って来れそうな程のセキュリティの緩さだ。


 流石に怪しいと思い、隠遁を発動して中に潜入してみると、やはりそこには誰もいなかった。


 ギルドに偽の情報を掴まされたのかとも思ったが、流石にそれは無いはずだ。だって、上からのお達しだし、クエストなのだ。そんなことあるはずがない。


 隠し扉や通路でもあるのかと思い隅々まで探った所で何も出て来なかった。これは、本当にどういうことだ?


 まるで、ペーパーカンパニーみたいだ。何も怪しい所が無い代わりに生活感もない、それこそが怪しさの塊だ。


 ん、でもわざわざこんなことをする必要があるのだろうか? 現実世界なら住所を押さえておくっていうのは分かるが、ここで名目だけの建物を用意する意味ってあるのか? 流石に誰も利用しないなんてことはな


「おい、誰かいるのか?」


「……!?」


 危なかった、今危うく声を出す所だった。だが、まだバレていない。隠遁はやっぱり便利だな。そして、これで手掛かりがようやく掴める。やっぱりここは何かには利用されていたんだな。こいつがここで何をするのか、そして何処にいくのか、しっかりと見せてもらおうか。


「ん、誰もいねーのか? 今誰かいる気配がしたんだが、まぁいいか。それよりも、っと」


 ん、俺の気配を感じ取ったのか? いや、流石に隠遁から漏れているとは思えない。つまり、野生の勘、第六感なのか? コイツは要注意人物かもしれない。


「ふぅ、今日も良い装備を手に入れたぜぇ〜。こんだけの業物自分で使いたい気もするが、さっさと売り払ってしまうか」


 ほう、やはりコイツがPKなのか。装備を奪って全部換金することで証拠を残さないようにしているのか。徹底しているな。にしても売り払うならここじゃなくて武器屋に行くべきじゃないのか? この近くに売店か何かでもあるのか?


「まあ、適当に値段つけてオークションで売るか。これは値が跳ね上がるぜぇ〜? そして、勿論、釣り上げるぜぇ?」


 ん、オークションか。確かにそれならここでもできるな。ん、オークションを使うってことは、


「……プ、プレイヤー?」


 あ、


「あぁん? やっぱり誰かいるみたいだな! 俺の目は誤魔化せないぜぇい?」


 いや、誤魔化せなかったのは耳の方だぞ? それに何ならさっきは目の方は騙せたし。


 って、やばい、どうしよう。俺、絶体絶命なんだが!?







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すみません。ちょっと不定期になりつつあります。

なるべき毎日投稿を目指しますが、当面の間は不定期更新ということでよろしくお願いします……


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