第920話 組組


「おぉ、お前は……! 今まで何処に行ってたんだ?」


 俺が暗殺ギルドに到着すると、受付の人に俺の顔を見るなりそんなことをいわれた。


 一応疑問文の体裁を取っていたが、ほぼ怒られているような感覚だった。怒られる筋合いはないんだが、ギルドに所属している以上そんなものなのか?


 でも暖かく迎え入れないと、怒られるのが嫌だからと次に来る可能性が低くなると思うんだけど良いんだろうか? 


「おい、ちょっと良いか?」


 そんなメンタルもフィジカルもマッチョな受付に呼び止められた。受付に呼び止められるなんて、そうそうないことだ。何かあったのだろうか? 面白そうなことだったらやりたいな。面倒臭そうだったら勿論やらないが。


「どうも最近巷を騒がしている組がいるらしいんだ。そいつらは見境なく人を殺しまくってるって噂だ。俺も詳しいことは聞かされてないが、お前が来たら伝えるように言われてたんだ。暗殺ギルドとしてもこの事態は見逃せないみたいで、お前に協力してもらいたいんだ」


「協力してもらう、だって?」


「あぁ。すまないがこれは上からのお達しなんだ。だからお前にも従ってもらうしかないんだ」


 なんだよそれー。上から言われたからって問答無用で言うこと聞かないといけないって言うのは嫌だな〜。俺がわがまま言ってるわけでもないだろう? なんでそんな言い方されないといけないんだよー。


「あ、そうそう上からこれも言われたんだが、これに協力してくれたらいつも全然顔を出さないお前のことも何のお咎めなしでいいって言ってたぞ。どうする?」


「あ、やりますやります」


 それを言われたら俺も強く言えないな。一員として依頼をこなさないといけないんだろうが、俺はそれをガッツリサボっているわけだしな。まあ、仕方ないかー。それに今日はゴブリンの進化素材の調達という側面もあるが、暗殺ギルドの仕事をしたくてきたんだ。断る理由はそもそもない。


 えーって言ったのはただなんとなく反発してみたくなっただけなのだ。


 にしても、殺人集団ってやばくないか? 見境なく人を殺しまくるってそれはもうほぼモンスターだぞ?


 ……なんかあんまり人のこと言えないような気がするんだが、まあいっか。俺はモンスターの王だし、上から言われたら従わないといけない平社員でもあるんだからな。


 何かあっても上の人が守ってくれるだろうし、守ってくれなくても自分の国に立て籠ればいいだけだ。うん、自分の国があるって安心感が半端ないな。


「それで、その組のアジトの場所とかあるんですか?」


 アジトっていう響きも懐かしいな。いつだっけか何度か潰したことがあるが、それもかなり前だしな。今はあの時よりも更に強くなっている筈だ。俺だって成長してるんだぞ、ってとこをこのギルドにも証明できたらある程度融通を効かせられるようになるだろう。


「場所は第四の街の外れにあるらしい。だが、都度都度違う場所に突如出現し風のように消えていくようだ。だからこちらの組員もなかなかに手を焼いているみたいでな。そこでお前に白羽の矢が立っていた、というわけだ。……それも結構前の話だがな」


 あ、俺そんなに来てなかったんですかね? まあ、確かにここに来た時何故か実家に帰ってきたような気分になったからな。うん、つまりはそういうことか。


 にしても、突如として現れ風のように消える、ってプレイヤーか? いや、まさかそんな訳ないよな。


 プレイヤーがNPCクエストの対象になるわけがない。


 とりあえずサクッと行ってサクッと潰しますか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る