第909話 お楽しみの秘技


 ドスンッ!


 俺は上空から地上へと降り立った。登場をどのようにするか実は結構迷った。急にそこら辺から現れるのは威厳が無さすぎるし、かと言って、何も無いところから急に現れるのは難しい。


 じゃあ、どうしようってことで上から現れたのだ。上空で隠遁を発動してればまあバレないからな。


 そして、メガネくんはしっかりと役目を全うしてくれたようだ。俺が降り立った先にはかなりの数のプレイヤーがいた。


 コイツらが全員俺の養分と化すのか、楽しみだな。「おいおい本当に現れたぞ」とか、「あれ、こんな装備だっけ?」だとか色んな声が聞こえてくる。だが、しっかり驚いてくれているみたいだ。


 そして彼らの闘志も十分に感じられる。これなら俺が本気を出しても正当防衛って認められるよな? よし、まずは最初に下味からつけていこう。


「【封印】、【燐炎】」


 封印を使って無限魔力を封印し、超微弱な炎を敵全体に付与する。これだけで敵は火傷状態になってジリジリとHPを焦がされていく。そして、その恐怖から逃れる為には、、、


「「「うぉおおおおおおおおお!!!」」」


 そりゃアホみたいに突撃して元凶を断とうと思うよな。そして、俺めがけてプレイヤーが集まった所に、


「【重体渋滞にじゅうたい】」


 デバフスキルでAGIを低下させる。俺に向かって走っているのにも関わらず、まるで止まっているかのような低速感、敵が多ければ多いほど効くって面白いな。まるでスローモションでも見ているみたいだ。そして、これでチェックメイトだ。


「【獄絡饒駑ごくらくじょうど】」


 ドクンッ


 その場にいた全員の振動が一度に大きく鳴り響いた、そんな音が聞こえたような気がした。その場にいた多くのプレイヤーが俺のたった一度のスキルで地に付し、残っているプレイヤーも苦しそうに足を止めている。


 まあそれでも全員死ななかったところを見ると、流石はプレイヤーと言ったところだろうか。まあ、始まりの森のオオカミと同じだったらそれはそれで不味いか。


 そして、もはや俺に向かってこようとしているプレイヤーはゼロだった。


 ここで全員死んでもらってもいいんだが、せっかく俺の第一波を越えられたんだ。何かご褒美を与えるべきだろう。それこそここだけの耳寄りな情報とか、だな。


「人間の中にも中々骨のある奴がいるようだな。だが、私には遠く及ばない。ここで死ぬのもまた貴様らの運命なのだろうが、せっかくだからチャンスをやろう。近々、魔王国を建設する、もし軟弱な人間の中で我の軍門に下りたいというものがいれば、快く受け入れよう、私は誰も拒まないからな」


 俺がそう言うと、その場に残っていた全員が口を開け、呆然としていた。そりゃ、自分の命を狙ってた魔王から急に国を作るから来たい奴は来い、って言われたらビックリするか。


 ま、俺には関係ないことだ。それに、建国にもまだまだ時間はかかるだろうしな。と言うわけで、


「それまでに、精々使える駒となるよう腕を磨いておくことだな。では、死ね」


 数を大幅に減らしたプレイヤー軍団に先程と同じコンボを使ってもステータス低下率は先ほどよりも小さい。そこで、ここにきてお楽しみ発動だ。


「【ぼったくり】、【重体渋滞にじゅうたい】、【獄絡饒駑ごくらくじょうど】」


 下げるステータスをぼったくらせて頂きますね。


 流石にいくら鍛えているプレイヤーといえど、ぼったくられればそのステータスはマイナスを切ったようで、さっきまで大量にいたプレイヤー達は跡形もなく消えてしまった。

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