第903話 勝者の責任
ここ獄界では力こそ正義、強者こそ勝者の世界だ。力持つものに民は集まり従い、力なき者、敗者には何も残らない、そんな世界だ。
そしてこの法則は閻魔にも当てはまる。
「俺が負けた、だと……?」
今まで常勝無敗で閻魔の座まで登り詰めた閻魔であったが、初めての敗北に悔しがるでもなく、困惑していた。
❇︎
『閻魔大王に勝利しました。獄界を支配下に置きますか?』
「え?」
俺が閻魔大王との痴話喧嘩に勝利するとそんなアナウンス、天の声さんからのお声がけがあった。
獄界を支配下に置く、だって? なんでそんなことになるんだ? と、とにかくノーだノー。こんなとこを支配下に置いたら毎日毎日手合わせを申し込まれて何もできなくなるぞ?
『この決定は変更できません、よろしいですか?』
当たり前だ。俺には魔王という役目もあるんだ。もし閻魔に俺がなってしまったら閻魔王に……
アリ、だな。なんかカッコいいじゃねーか。コレは確かに迷ってしまう。だが、流石に毎日コイツらと手合わせはしんどいよなー。特にヴァールとか俺に勝つまで延々戦いを挑んで来そうだ。
よし、断腸の思いだが断ろう。まだ時期尚早だ。俺には国家建国もしないといけないしここで寄り道をしてはダメだ。んー、でも、いやノーだ!
『……本当によろしいのですか?』
おいおいおい! そんなこと言われたら迷ってしまうだろうが! ってか、天の声さんが動揺してる? 最終確認してくれるなんて優しいな。もしかしてただのアナウンスシステムじゃなくてAIが搭載されてたりするんだろうか?
んー、もし本当にAIで擬似人格があるのならば天の声さん的にはノーして欲しくないってことだよな??
いや、でもここで手を広げ過ぎるのは絶対に良くない。最終確認してくれたことで逆に決心がついた。ここはノーだ。
『、、、了解しました。獄界の支配権が再び閻魔大王に戻ります』
『閻魔大王の好感度が最大になりました』
俺が閻魔大王の方に目をやるとちょうど目を覚まして立ち上がろうとしていた時だった。
「お、おい魔王! 俺を殺さない、のか?」
は、何を言ってるんだコイツは。変な所を打ったのか? 打ちどころ悪すぎて頭イカれたか?
「おいおい、なんで友達を殺すんだよ。それにただの喧嘩だろ? いつから俺らは殺し合いしてたんだ? お前が死んだら俺は困るぞ?」
「なっ……!?」
だって支配権俺に移されるし、面倒臭そうな配下達の相手もしないといけないしな。
「お、お前って奴は……なんでいい奴なんだっ!」
ガバッと今にでも抱きつきそうな顔してこちらに走って来たので俺は距離を取って言った。
「俺、弱い奴には興味ないからな? 次からきたときまでに強くなってなかったらその時は……分かるよな?」
「くっ! あ、当たり前だろ! 俺が負けたままで終わると思うなよ? 次会った時がお前の最後だからなっ!」
そう言って閻魔様は何処かへ行ってしまった。でもあんな態度をとりながらも俺への好感度はMAXなんだろ? もーしょうがない奴だな!
よしじゃあ俺も帰ろ、
「あ、装備……」
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一体彼はいつになったら装備を取りに行くのでしょうか?
次回には流石に取りに行くかな?
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