第902話 蒼い炎


「うぉぃ! い、今、蒼火、蒼火って言ったのか!?」


「え、言ったけど」


 ん、そんなに反応することか? もしかして俺に地獄の装備を着用されるのが嬉しいとか? ゴツい見た目にそぐわず意外とツンデレな所があるじゃねーか。


「おいおい、そんなに俺の装備が気になるのか?」


「はぁ? お前はもう蒼火を持ってるってのか!?」


「え、いやまだ持ってないけど」


「なんだよビビらせやがって。寝言は寝てから言えよな」


 え、俺が装備を持ってるだけでビビるのか? 俺が注文したのってそんな強い装備なのか? でも閻魔ともあろう方が装備ごときにビビるって相当だぞ? なんか逆に楽しみになってきたな。どうせ見た目も格好いいからその場で着て見せつけてやろう。


「ん、寝言?」


 なんで寝言なんだ? 装備は今から取りに行くんだから別にそこまで突拍子もないことではないだろう? なんでこの言葉が出てきたんだ? 何か、勘違いしているのか?


「そりゃ、お前なんかが蒼火を使えるわけないからな。俺だって、つい最近燐炎を使えるようになったんだからな。その更なる上をお前が使えたらおかしいだろ?」


 燐炎? 更なる上? コイツ、何喋ってるんだ? あ、まさか、


「えーっと、もしかしてもしかして鬼火の進化系について言ってるのか? 俺が言ってるのは装備、今俺がつけてるような防具のことなんだが」


「はあっ!?」


 その時の閻魔は今までで一番驚いてて、それでいて間抜けな顔だった。


「おま、装備って、は? 俺が言ってたのは蒼い火って書いて蒼火だぞ! 何抜かしたこと言ってんだよ! ふざけんじゃねーよ! マジでびっくりしたじゃねーかよ!」


 いやいやいや、勝手に聞き間違えたのはそっちだろう? なんで俺が変なこと言ったみたいになってるんだ? 相手がいくら閻魔といえどもやってないことまでやったと認める俺じゃないぞ?


「いや、聞き間違えたのはそっちだろう? そもそも絶対イントネーションも違うし、お前が悪いだろ!」


 うん、ちゃんと反論できる俺は偉いな。ここで冤罪を認めてしまっては今までの努力が水の泡になってしまう。自分を救うと思って勇気を振り絞ることは大事なことなんだな。


 あ、そういえばそろそろ燐炎を進化させても良いかもしれんな。閻魔様も燐炎になったって言ってたし、次の蒼火も気になる。蒼い炎ってどんな感じなんだろうなー。


「あぁん? 誰にタメ口聞いてんだ、あぁん? おい、表に出ろ今からやるぞ。どっちが上かハッキリさせてやる」


 おっと、これは閻魔様の逆鱗に触れてしまったのだろうか。でもここで引く訳にはいかない。最後までやり切ってこその勇気だ。


「良いだろう。今まで本気を出していなかったからな。負けても泣くんじゃねーぞ」


 売り言葉に買い言葉を重ねた結果、俺たちはマジ喧嘩に発展した。


 結果は言うまでもなく、炎が効かない俺の勝利だった。なんか、ズルしてごめんな。でも勝ちは勝ちなんだ。許してくれ。


 そんなわけで俺は閻魔様を倒すことに成功した、成功してしまった。


 そう、成功してしまったのだ。


 この時の俺はこの世界において、勝利することの意味を軽く捉えてしまっていた。










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【誤字注意報発生!】結構急いで書いたのでもしかしたらあるかもしれません。

見つけ次第報告お願いします!(え、読み返せって? うっ、お腹がっ! イタタタ、ちょっとトイレ行ってきます!!!

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