第897話 魔王参戦
蜘蛛って脱皮できるのか?
『ご主人様、配下達も脱皮に成功しました。敵の足止めと同時に、脱皮したことによって各種ステータスが上昇し、敵勢力の排除が進んでいます! 素晴らしい助言をありがとうございました、キシャ!』
そ、そうか。脱皮できたみたいで何よりだな、うん。無事語尾も戻って、っていい加減キシャに関しては忘れよう。そんなことより、今戦場が、国がどうなっているかの方が重要だ。
相手はプレイヤーだ。一度死んだくらいじゃ止まらない、むしろそれを機に無限に攻めてくるかもしれない。死に戻りの恐ろしさは俺が一番よく知っているからな。
『アスカトル、こっちも相手を足止め作戦に切り替えるぞ。糸を使って相手を拘束するんだ。なかなか捕まらない奴らに対しては複数人で当たれ! ここからはこちらのターンだ全力で抑えにかかるぞ!』
まさかプレイヤーが絡んでくるとは思っていなかったが、ここまでくればもう大丈夫だろう。倒すんじゃなくて拘束すれば万が一国民を手にかけることもないしな。敵の作戦だったが、良いものは頂く、弱肉強食の世界じゃこれが常なのだ。敵に対して情けをかける方が失礼だからな。
よし、じゃあそろそろ騎士団長様が到着す
『ご主人様! 先程の敵が激しい抵抗を見せいています! 先ほどまでは向こうも反撃していたので隙がありましたが、今は完全に防御に徹されており、なかなか隙がない状態です! いかがしましょう?』
ふーん、アスカトルたちに対して守り切るっていうのか、相当な手練なんだな。確かに魔法による攻撃でアスカトルが焦ってたくらいだからそれくらいはするのだろう。
んー、ここは俺が出勤した方がいいか?
でも、もし行って顔を見られたら俺、一巻の終わりなんだよな。魔物を使って国を襲わせてるわけだし、糾弾されまくりそうだ。
だが、だからと言ってアスカトルに加勢しないのも違う気がする。んー、ここはそうだな、姿を隠して応援に行こう。姿さえ見られなければとりあえずはどうにかなるだろう。
『アスカトル、今から応援にいく! それまで付かず離れずで敵を逃さずやられるなよ! もう少しの辛抱だ』
『かしこまりました、キシャ! ありがとうございます、キシャァ!』
ふっ、じゃあ早速向かいますか。今回は俺の出る幕なんてないと思ってたが、こうして戦場に出るとなるとやはり心躍るものがあるな。あくまでアスカトルのサポートだが、楽しんでいくとしよう。
❇︎
アスカトルが呼んでいた戦場に身を隠して到着すると、そこには衝撃的な光景が広がっていた。
なんと、女性三人が大量の蜘蛛に対して大立ち回りをしていたのだ。そしてそれだけではない、なんとその三人とも俺の見たことある女性だったのだ。
いつかのイベントで見た女性と、はたまたどこかで見たことのある女性、もう一人は、、、って全員イベントで戦ったことがあるだけじゃねーか!
まあ、そりゃずっとソロの俺に知り合いの女性プレイヤーがいるわけもないんだがな。
にしても、大きな盾を持っている人を中心に二人の魔法使いが連携してアスカトルの攻撃を防いでいる。
逆にアスカトル側は拘束という命令を俺が出したばっかりに糸だけの攻撃になりとても戦い辛そうだ。
にしても相手は容赦なく炎系の魔法を使ってるな。俺がダメージ肩代わりしてなかったら本気のアスカトルでもキツかったかもな。それだけ相性っていうのは恐ろしいからな。
ってか、よく見たら俺の爆虐魔法にも引けをとらないんじゃないか? そりゃ焦るし苦戦もするわな。
じゃあ、観戦ばっかしててもアレだし早速やっちゃいますか!
俺は潜伏を解き、アスカトルと敵三名の間に割って入った。これはかなりカッコいい登場シーンじゃ無いだろうか?
「「「「…………」」」」
俺の登場にその場がシーンと凍りついた。おいおい驚きのあまり声を失ってしまうのは分かるが、少しくらいリアクションをしてくれないと俺のメンツが、、、
「……あ?」
俺、何してんだ?
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