第894話 指揮官の差
『ご主人様! 今度は今まで抵抗していた者たちが各個撃破に移行してきました! ご主人様のおかげで耐えることができていますが、いかがしましょう?』
反撃されているからと言われても、こちらからはまともな攻撃ができない以上、専守防衛に徹しなければならない。もはや反撃とは、と思ってしまうのだが、王様の言いつけを守る為に俺は攻贖他愛を発動し、味方のダメージを俺が全て負担した。
そうすることによって国と俺たち共に被害を出さずに乗り切ることができると踏んだ。しかし、各個撃破なんてことをされたら、そいつらは恐らく撃破するまで攻撃する、ってことだろう?
俺の味方ダメージ無効化も完璧とは言えない。俺が無効化できていない攻撃が飛んでくるかもしれないし、その攻撃が自動回復に追いつかずに俺がやられてしまうかもしれない。もしそうなって仕舞えばこの作戦は一巻の終わりだ。
だから俺はどうにか素晴らしい作戦を思い浮かばなければならないのだが……
そうそうそんな素晴らしい作戦が思い浮かぶわけではない。そもそも縛りがキツすぎるのだ。そもそも、反撃はともかく、各個撃破なんて作戦を皆、団結して行っていること自体想定外すぎるのだ。
「ん?」
作戦? 一丸? なんか違和感があるな。確かに国民が皆で一致団結して抵抗してくる可能性は十分にあるのだろうが、こちらの行動に対してすぐさま方針を打ち出し、実行できるほど団結しているのだろうか? そもそも命令系統とかはどうなっているんだ?
可能性としてはなくは無いだろうが、どこか違和感が拭えない。なんせ、こちらは同時多発的に攻撃してるんだぞ? 一気にいくつもの場所で各個撃破に切り替わるなんて考えづらい。これは、もしかして、、、
『おい、反撃している集団の様子を観察してくれ。そいつらは皆どんな服装をしている?』
服装は一眼みて一番わかりやすい判断材料だろう。現実で考えると、国民ってのはみんなそれぞれ自分の好きな服を思い思いに着るもものだ。
しかし、ことゲームの中に関して言えばそれは絶対にありえない。だって、そんなことをすれば面倒臭いだろうし、何より分かりにくい。そう、プレイヤーとの差が。
『皆、それぞれ統一感の無い格好をしていますね、それに武器も色々なものを使用しており、これと言った特徴が無いのが特徴と言えるかもしれません、キシャ』
うむ、やはりな。こいつらはプレイヤーで間違いないようだ。それに武器にまで言及してくれたことで一気に確実性が増したな。普通の国民ならば武器がある程度統一されていない、なんてことはありえない。全てから解放されている自由なプレイヤー集団でなければありえないことだ。
『よし、ならばこちらからも手を出していくぞ。今反撃しているであろうその殆どが国民ではない。つまり、倒しても良い相手、って訳だ。というわけで、反撃開始っ!』
『了解しましたっ、キシャ!』
ふふ、どこか嬉しそうな声色だったな。アスカトル自身も攻撃されるだけされて反撃できない状況にイライラしてたのかもしれない。
『あ、でもやっぱりもしかしたら国民の可能性も無きにしも非ずだから、殺してしまってはダメだぞ。お前たちの糸で捕獲してくれ、まあ、多少手荒な真似は目を瞑るぞ』
『了解しました、キシャ』
あ、さっきよりもテンション下がってる。もしかして鏖殺したかったのか? うちの子ってそんなに戦闘狂、っていうか殺人狂だったの!?
全く、どこでそんな子供になってしまったのだろうか? そんな風に育てた覚えはないんだけどなー。
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