第892話 攻めて贖う
ふう、遂にこの時がやってきたようだな。
俺は今、ブディオス国の前に立っている。話には聞いていたけど、実際に来るのは初めてだな。ファーストコンタクトが襲撃ってなんかゴメンって感じだが、俺の為にも王様の為にも襲わせてもらう。
『アスカトル、配下を生成し、この国を襲撃するのだ』
『かしこまりました、キシャ』
アスカトルは既に準備していたのか、俺の命令に合わせて即座に無数の蜘蛛を解き放った。しかも、いつものように小さな蜘蛛ではなく、そこそこ大きめの、現実にいたら普通に大事件なレベルの蜘蛛を用意してもらった。
そうだな、大体自転車から軽自動車くらいの大きさだ。今回は脅かすことが目的だからな。無駄に抵抗されることなく、ビビらせるにはこの程度が丁度いいと思ったのだ。もちろん、蜘蛛たちには襲わないよう命令がアスカトルから言ってある。
さて、追加投入といきますか。
『ゾム、行くぞ』
俺がそう念話で伝えると、大量のゾムが国に向かって、出撃した。既に色んな素材を使って増殖済みだ。もう増殖しないように言ってるが、もしもの時は……俺が蘇生するから大丈夫だろう。
ゾムはゾンビでもあるからな。人間を怖がらせると言えば蜘蛛以上の効果を期待できるかもしれない。ゆっくりとジワジワ精神攻撃を行ってくれるはずだ。
カサカサ、ノソノソと大量のモンスターが次々に国内へと投入されていく、国内の一部は正に地獄絵図と化すことだろう。まあ、襲わないんだからだいぶマシだろうけどな。
ふう、後は待つだけだなー。頃合いを見て、騎士団長たちがきたら撤退したら任務完了だ。その後の流れは俺よりも王様たちの方がよく心得ているだろうしな。
そんなわけで俺は空中で優雅に観戦しようと思っていたのだが、突如、念話が入った。
『ご主人様! 攻撃されております、しかも大規模な反撃です! これは、国民ではなく、外部からきた人々のようです、キシャ!』
何っ!? 反撃されてるだって?
いや、国民が全く無抵抗であるとは思っていなかったが、そこまで大規模とも思っていなかった。これは不味いぞ。なんせ、王様の護衛たちにやられないと、王様の存在が不必要になってしまう。決して彼ら以外に敗北してはダメなのだ。
『ご主人様! どんどんと数が減らされております、キシャ! 生成が追いつきません! どうしましょう、キシャ!』
くそっ、そんなに抵抗が激しいのか!? 何か、何かないか? 回復させるのはこの場ではできないし、かといって俺が反撃しては目立ちすぎる。どうにか、俺が目立たずに彼らを助ける方法が……
「あ、これだ! 【攻贖他愛】!」
これは、このスキルを発動中、味方が食らったダメージを全て俺が肩代わりする、というものだ。
つまり、配下蜘蛛と増殖版ゾムの攻撃は一手に俺が引き受けるのだ。
仮に配下蜘蛛が炎の攻撃を食らったとしよう、すると、そのダメージが入る瞬間に、対象が俺へと切り替わる。つまり、俺に炎が当たったことになるのだ。
そして、俺に炎は効かない。つまりは、そういうことだ。
まあ、今初めて使ったから、今初めて仕様を知ったんだけどな。まあ、使えればいいってことよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます