第888話 初心の死


 俺はまたも宇宙への階段、いや梯子を駆け上がっていた。


 その移動時間はやはり宇宙に行くというだけあって、そこそこ時間がかかってしまう。そして、ただひたすら足を動かしている時間が続けば当然、余計なことも考えてしまう訳で……


 なんで俺死んだんだろうな。


 なんてことを考えずにはいられなくなってしまうのだ。だって、目立った外傷もないんだぞ? ダメージを受ける理由がないのだ。それなのにスリップダメージのようにHPが削られるなんてことがあっていいのか?


「はっ!」


 スリップダメージといえば、もしかして宇宙は安全地帯の外っていう可能性はないか? 一時期流行っていたFPSのゲームではよくアンチと呼ばれるものが存在して、その外に出るとスリップダメージを食らっていたのかもしれない。


 確かに宇宙って領域外、って感じするし、これって正解なんじゃ


「あ、」


 いっつも思ってたんだが、死ぬ時って本当に一瞬だし、唐突だよな。人生における死もそんな簡単にやってきてしまうんだろうか?いつでも死んで良いと思ってる自分と、なんだかんだまだまだ生きていたい自分の両方が存在する。


 死に慣れる為に死に続けても結局、逆説的に生が浮き彫りになってしまう。


 んーやっぱり難しいことは考えてくないな。だって今はちゃんと生きてこのゲームで強くなりたいって思ってる訳だしな。答えを無理やり出してそれに縛られる必要もないはずだ。


 ってな訳で、死にまくるぞー! それに、死にまくったら例の如く無効化スキルによって俺がどうやって死んでたか分かるしな。



ーーースキル【気圧無効】

      【失明無効】

      【垂直機動】を獲得しました。


【気圧無効】‥気圧によるダメージを無効化する


【失明無効】‥状態異常:失明が無効になる。


【垂直機動】‥垂直移動時に、移動速度が上昇し、体への負担が少なくなる。



「気圧無効、重圧無効、風圧無効、水中適応の一部が統合されます」


ーーースキル【圧無効】を獲得しました。


「垂直機動、天駆が統合されます」


ーーースキル【天翔機動】を獲得しました。


【圧無効】‥あらゆる圧によるダメージを無効化する。


【天翔機動】‥任意で空中に足場を生成し、空中移動速度が上昇する。また、体への抵抗が少なくなる。



「ふぁっ、えっ!?」


 ちょ、ちょっとこれはどういうことだ? あまりにも情報量が多すぎて脳の処理が全く追いついていないのだが。それに、どこから突っ込めば良いのやら……


 ま、まずは一番上から順々に片付けていくか。よし。


 俺、気圧によって死んでたのか!?


 ん、そもそも気圧ってなんだ? 気圧で人を殺せるもんなのか? い、いや現にそれで俺が死んでるのは間違いなんだろうが、それでも俄には信じがたいぞ?


 だって気圧って大気の圧だろう? そもそも宇宙には大気がな


「あ、」


 もしかしてその所為で体にある空気が膨張したのか? でもそれなら爆散してくれるんじゃないのか? なんで地味なスリップダメージに留まったんだ?


 よし、こういう時は有識者に聞くのが一番早いな。俺よりは賢くて色んなことを知ってそうな……


『もしもしーメガネくーん? 調子はどう?』

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