第884話 苺の気持ち

イチゴ視点です。

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「い、イチゴっ!?」


 気づくと私は砂浜の上に横たわっていましたわ。これが、座礁っていうんですのね……


「だ、大丈夫なのイチゴ? って、なんでここにいるの!? い、いや別にいて欲しくないて訳じゃなくて、もちろんいてくれて嬉しいけど、あの時、私を庇って……」


 まるで眠りから覚めるように意識を取り戻した私は、目の前にお姉様の姿を見つけましたわ。その隣には、ハクも。


 お姉さまは珍しく動揺していますわね。こんなに慌ててるお姉さまを見るのはいつぶりかしら。ふふ、私このまま……


「えっ!」


 私はガバッと体を起こしましたわ。そして、周りを見渡して、お姉様とハクをじーっと見つめて、、、


「な、なんで私がここにいるんですの!?」


 ズゴーッ、二人はそんな音が聞こえてきそうな倒れ方をしましたけど、私としてはこれは重要な問題ですわ。確か、大海を司る神があーだこーだって、はっ!


 私はあることを思い出すと急いでステータスを開きましたの。すると、そこには、


「海神魔術……」


 そこには見慣れない、だけどもどこかで聞いた事のある魔術が書いてありましたわ。そして海の神と言われて思い当たるのは一つだけ、恐らく間違い無いですわね。


「イチゴちゃん。一体何があったのか教えて頂戴」


 お姉さまが今までに見た事のない真剣な眼差しで私を見つめてそう言いましたわ。私としましてはこのままずっと眺めていたいものですが、そういうわけにも行きませんので、私の身に起きたことを一から説明しましたわ。


 私がお姉様を庇い、海の底まで連れて行かれたお話を。


 ❇︎


「はぁ、全くそんなことがあったなんて」


「びっくり」


 お姉さまは心配と驚きが入り混じったような顔でため息まじりにそう言いましたわ。無口なハクも珍しく言葉を発しましたわね。それだけ私に起きたことが衝撃的だったのでしょう。


 張本人の私ですら、夢だと言われたら信じてしまいそうなほど、現実味のない話ですわ。それこそ、目の前にある海神魔術さえなければ信じられないほどに。


「でもこれでイチゴちゃんがだいぶ強くなったのは計算外の収穫ね。海神魔術なんてきっとまだ誰も手にしていない強力な魔法よ! それこそ私が欲しいくらいだもの!」


「うん。すごい」


「そ、そんなことないですわっ! お、お、お姉様の方がすごいですわよっ!?」


「ふふっ、でも眷属になる、というのが少し引っかかるわね。用があれば呼び出す、と言ってるのだから今すぐどうこう、というわけでは無いんでしょうけど、強力な力を得た代償ですもの、きっと一筋縄では行かない大きな試練が待ち受けているはずよ」


「うっ」


 お姉様の言葉を受けて私は一度考えさせられましたわ。私もそれを考えなかったわけではないんですの。でも、それでも私の答えは変わりませんの。


「私は、私は! お姉様のお役に立てるのならばどんな試練だって乗り越えてみせる、ですわっ!」

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