第883話 楽死


『え、ちょ、直射日光で失明するのか?』


 不味い、心当たりしかないから自分でも分かるくらい動揺しちゃってるぞ。


『ほら、小さい頃、直接太陽を見ちゃダメって言われてませんでした?』


 た、確かに言われてたな。俺は別に直視しても全然大丈夫じゃんかとか思ってたんだが、もしかして本当にそれで失明するのか?


『別に少しくらいなら大丈夫とは思いますが、直接日光を見ることによって視力が低下していき、いずれは失明しちゃうみたいです。名前は、、、ちょっと思い出せないですが、確かあったと思います!』


『ま、マジか……』


『え、陛下がプレイヤーにそれをさせるんですよね? ダンジョンに擬似太陽を設置して、』


『え、あ、いやそうじゃない、そういうつもりじゃないからダンジョンに太陽を置くのだけは辞めてくれ』


『わ、分かりました……』


 そんなことされたらトラウマになっちゃうかもだしな。


 にしても本当に直射日光で失明するとは……もっと子供の頃に大人が教育すべきじゃないか? それか国民全員に遮光板を配布するとか。


 まあ、俺が直射したんだから何も言えないけどな。


 ん、ちょっと待てよ。原因が分かったところで治療できる訳じゃないよな? ってことは別に原因を特定したとして意味がないってことだよな?


 いやいやいやいやいや、意味がないことはないはずだ、俺が無駄にしなければ良いだけのことだ。俺が活用しさえすれば無駄なことなんてないんだ!


 そう、だから失明が治ったら失明しまくって失明無効を獲得すればいいだけのことだ。


 ……って、それも失明が治る前提、かー。


 あーあー、もう死ねればどれだけ楽だろうか。ここがどこか分からない以上、魔王城からリスポーンすることになれば、もうここに戻ってくることは、、、


「ん?」


 ん? 何か違和感が……


 もうここに戻って来れない? いや、違うな。ここがどこか分からない? いや、それでもない。リスポーン? リスポーン!


 そうだ、魔王城でリスポーンするからここに戻ってくることができないんだよな? でも、クエスト始まってるんだぞ?


 そして普通に考えて、死んだらもう戻ってこれないクエストなんかあるか? いや、あるにはあるだろうけど、俺が受けているクエストは一度も死なないことが条件になってるわけじゃない。


 そして、俺の状況は死んじゃダメ、なんじゃなくて死んだら戻って来れない、だ。しかもリスポーン地点の影響でだ。


 そもそもリスポーン地点ってどうやって決まるんだ? ログイン、ログアウトしてる場所っていう認識でいいんだよな?


 じゃあ、今のリスポーン地点ってあの貴族の屋敷じゃね? ってことは俺、死ねるんじゃ、、、、


「よし、死のう」


 なんだ、そんな簡単なことだったのかよ。後は何で死ぬか、だがまあ何でも良いよな。


 というわけで、適当にスキルと称号を封印して、っと。


 ゴキッ


 俺は自分で自分の首を折った。

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