第882話 手詰まり感


 その後、王様と話し合った結果、今すぐ出ると言うわけにも行かないので一週間後にここを出発することになった。


 王様は王様でそんなにフットワークが軽いわけではないし、俺も俺で少し準備をしておきたいことがあったのだ。


 そう、眼に関してだ。


 ここに不時着してからというのも、ずっと機能していない俺の目ん玉なんだが、王位奪還に当たって流石に俺も万全の状態で望みたい、そういう気持ちが強くなってきた。


 当初は最悪死ねば良いと思っていたが、ここがどこであるか分からない以上、それも不可能だ。だからどうにかして死ぬ以外の方法でこの目を治さなければならないのだ。


 だが……


 本当にどうしたもんかな。なんせ理由が分からないのだ。ハーゲンの体から落ちて、ハーゲンが帰って、俺は不時着した。それまでの間に一体何が起きれば失明なんて大それかことが起きるんだ?


 まさか墜落時にちょうど小石か何かが目に入ってそのままやられた、ってわけでもあるまいし……もしそうだったら痛みを感じる筈だし、そもそも俺は顔から不時着したわけではないのだ。


 そうなると考えられるのは、この地にプレイヤーは必ず目が見えなく呪いがかかっている、とかか? でもそんなプレイヤーだけを狙い撃ちにする効果なんて運営がつけるだろうか? NPCとプレイヤーがそんな区別されるようなことしないと思うんだよなー。


 いや、待てよ、何も仕掛けたのが運営、って訳じゃないよな。それこそプレイヤーが仕掛けたのかもしれない。それならもしかしたら、、、


 いや、ダメだ。そういえば俺呪術無効持ってるんだった。そもそも呪いの類が効かない。


 じゃあ、なんなんだ? 


「……」


 よし、一旦、前提から考え直そう。そもそも、どうやったら人間って失明するんだろうか。それこそ物理的に目潰しを食らったり、したら見えなくなるかもしれないが、それだけじゃない筈だ。そして俺は恐らくその他の理由でなっているはずだ。


 ならばそれを考えた方が良いだろう。


「……」


 考えて分かるんだったら今こうやって悩んでないんだろうな。……よし、こう言う時こそ有識者に見解を述べてもらうしかないな。


『おーい、メガネ君ー』


『は、はいっ! ど、どどど、どうされました?』


 ん、どうしたんだ? すごい慌てっぷりだな。何かやましいことでもしてたんだろうか? まあ、本当にやばいことならハーゲンたちから連絡が入るだろうし、多分大丈夫だろうな。って、そんなことより、


『いや、何聞きたいことがあってただな』


『聞きたいこと、ですか?』


『あぁ、ゲーム内で物理的な衝撃以外で失明することってできるのか、と思ってだな。どうだ、何か知っていることはないか?』


『物理的衝撃以外での失明、ですか……恐らく、陛下の言い方からして先天的なことは考えなくて良いんですよね? となると、、、いや、あれは原因が定かでないし、ゲーム内で糖尿病を引き起こすのも非現実的だ。なら、、、』


 俺がそう尋ねるとメガネ君が急にブツブツと独り言を言い始めた、そして間も無く、


『陛下、もしかしたら直射日光、で可能かもしれません!!』


『え、直射日光?』


 ……あ、心当たりしかない。

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