第880話 好機と交渉


 別室に連れてこられた俺は早速話を振られた。


 なんか、ダラダラと話が長かったから割愛させてもらうが、要は、あのモンスターたちは本当に安全なのか、というものだった。一応として王様たちにも軽く脅しをかけてたんだが、それが思いの外効きすぎてしまったのだろう。


 効かないよりかはマシだが、話はちゃんと聞いてもらいたいよな。俺に敵対しなければ大丈夫って言ったのに。まあ、それでも不安になるのは仕方がないか。他人から見たらちゃんと二人を制御できているのか、って問題もあっただろうしな。


 そんなこんなで敵対しなければ絶対に大丈夫であることを伝えると、俺は本題に入った。いや、王様からすれば今までのが本題のつもりだったんだろうが、俺からすればもっと重要なことがある。


 それは、王様がどうやって再び王になるのか、という問題だ。


 俺は、エクストラクエストまで発現してしまっているから、というのもあるが、王様たちの護衛を買って出ているの根本的な理由はもう一度王座の位についてもらって、魔王としての俺とのふっといパイプを繋ぐ事にある。


 別にそれで何をしようってわけではないのだが、あった方が何かと便利そうだろう? だから王様にはなんとしても返り咲いてもらわないといけないのだ。


 だが、現状として、今は全くその兆しが見えないのだ。まあ、この国に助けてもらおうとしてた矢先に貴族に、この国に裏切られたから、それは王様自身よくわかっていることなんだろうが、それでも口出しせずにはいられない。


 というか、クエストである以上、口出しをしないといけないのだろう。


 ってことを考えると、アシュラとアスカトルを出したおかげで少しでも説得力、威圧感が増すのならば正解だったな。


「単刀直入にお伺いします。王様、貴方はどうやって再び王の位に戻ろうとお考えですか?」


「「なっ!?」」


 俺がそう、思い切って話を振るとあまりに予想外だったのか、騎士長共々息を飲むのが聞こえてきた。まあ、そりゃ一介の護衛がそんなことを言ってきただ大問題だろう。だが、俺に力があることは見せてきたつもりだ。どうか、話を聞き入れて欲しいものだ。


「そ、それはどういう意味だろうか」


「そのままの意味でございます。王様はこの国の支援を受け、更に後ろ盾となってもらうことで再び王の位置に着こうとしたのでしょう」


 そう言って俺は一旦区切る。彼らの反応を感じて間違っていないかどうかを確かめるためだ。今のところ大丈夫そうだな。


「ですが、ここの貴族に裏切られてしまった。それはそのままこの国に見放されたということではありませんか?」


「き、貴様っ!」


「まあ、待て。最後まで話を聞こうじゃないか」


 騎士長が突っかかって来たが、流石は王様度量が違う。最後まで話を聞いてくれるのはありがたい。


 実力行使をしても良いが、それだと俺が完全に制圧してしまう。


「ありがとうございます。そうこの国に見放されてしまって今、王様に次なる策はあるのか、そうきいているのです」


「ふむ、そういうことであったか。そしてお主は我に策がないことを見抜いて提言しておるのじゃろう? そして、お主に何か考えがあると見える」


 へぇ、やっぱり王様なんだな。こういう所はちゃんとしてるんだな。どうしてもいびきをかいてた印象が強すぎて、なぁ?


「流石は王様でございます。私は今はこの状況がチャンスと考えているのです」


「チャンス、だと?」


「えぇ。もし、本来の予定通りこの国の力を借りて王の座に着いたとして、それは本来の王様といえるでしょうか。この国に借りがある以上、何らかの圧力を受ける事になりましょう。だからこそ、この裏切られた状況をむしろ好機と捉え、自らで立ち上がっては見ませんか?」


「ふっ、何を言い出すかと思えば戯言だな。一人でたてぬからこうして他国の貴族の力まで頼っているのだろう」


「いえ、一人ではありません。私がお手伝いして差し上げます」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る