第889話 ビビリとお話し
「「「なっ!?」」」
俺がアシュラとアスカトルを召喚すると、その場にいる全員が息を呑むのが聞こえてきた。
でも、冷静になって考えると、目の見えてない奴が急に二体のモンスターを出してきたらそりゃビビるか。いや、これは別に目の不自由な方を蔑んでいるとかではなくてだな、普通に現象として異常さが凄いよね、って話だ。
しかも、アシュラに関しては腕が六本もある。初見の人にはかなりビビらせてしまったかもな。って、初見の人しかいないか。既に見たことあるのは俺だけで、その俺は絶賛見えていないわけだし。
そんな訳で、突然のことにビックリした王様たちは、段々と衝撃が薄れてきて逆にコイツら何だ? って言う雰囲気が流れ始めた。でも、皆アシュラとアスカトルが怖いのか何も言い出せずにいる。もしかしてこのモンスターを見るのは初めてなのだろうか?
じゃあ、俺が説明してあげないとだな。
「突然のことで驚かれたかもしれませんが、安心してください。彼らは私の従魔です。私に危害を加えようとしなければもちろん安全は保証させていただきます」
その言葉を貴族だけでなく、一応王様たちにも伝わるように言った。
「そ、そうか。心遣い感謝する」
王様が衝撃の呪縛から放たれたのか、俺に向かってそう言った。流石は一国の王だな、立ち直りも切り替えも早いようだ。
「では、早速監視をつけさせていただきますね、何、何もしなければこちらも何もしませんのでご安心ください」
『アスカトル 、ちーっちゃい蜘蛛を一体、あの、一番怯えている奴に付けさせてくれ』
『かしこまりました、キシャ』
こう言う時、本当に蜘蛛は便利だなと思う。なんせ、サイズ展開が大きいのだ。巨大蜘蛛から、古いお屋敷にいるようなちっこい蜘蛛まで用途に応じて使い分けが可能だ。更にお得なのが、賢さが変わらない点にある。別に小さいからと言ってそれは成長途中というわけでもなく、種として劣っているわけでもないのだ。
しっかりと仕事をこなしてくれる頼もしい存在なのだ。それを産み出してくれるアスカトルは一家に一台置いておいても良いくらいの高性能だ。
「ひ、ヒィッ! や、やめてくれー!」
貴族さんが恐れ慄いているが、こちらを裏切ってしまって以上そうせざるを得ないのだ。そこんとこはわかって欲しい。もしわかってくれないと死んでもらうことになるんだが、それは嫌だろう? だったらちゃんと従ってくれ。
という内容を直接言ったわけではないのだが、貴族は俺の雰囲気からそれを感じ取ったのか、もう抵抗するだけ無駄だと悟り、大人しくなった。うん、賢い選択だな。
俺がそんなことを考えていると、騎士長の気配が近づいてきた。そして、小声でこう言った。
「すまない、少し時間をとって話をしていただけないだろうか。王様もそして私も、貴方について色々と少し気になるのです。よければ場所も変えて……」
なんか、敬語とタメ口が入り混じった変な文だな。色々と少しっていう表現も気になるし、動揺しているのだろうか。俺は目が見えていないからかそんなことを考えてしまった。もしそうならちょっと申し訳なかったな。
だが、確かにここいらで今一度俺の立ち位置をはっきりさせたい、というのもあるのだろう。王様という立場から俺に対してあまり下手にも出れないだろうし、俺が気を遣ってやるしかないようだ。まあ、そのくらいでこの人たちが俺のバックについてくれるのならばお安い御用だ。
「えぇ、いいですよ」
「よ、良かった。では、王様の寝室に向かいましょう」
騎士長はあからさまにホッとした様子で俺を先導した。さて、一体どんな話をされるのだろうか。今のところ俺の好感度は悪くないと思っているのだが、何があるかはわからない。
それに、俺自身も少し気になることがあるからそれについて話を聞こう。
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