第877話 駆け巡る思惑
引き続きウィズ視点です。
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「ここがクエストを受ける場所なのか?」
私たちが目的地まで移動すると、到着するや否やシャークさんが不審がるように私に尋ねて来ました。私としては本当にここが目的地ですのでいくら疑ってもらっても構いませんが、私が信用してもらえる日は来るのでしょうか?
……まあ、来なくても大丈夫ですけどね。
「えぇ、そうですよ。では早速中に入りましょうか」
「え、ちょ、ここ、お城ですよね? ってことは王様がいるんじゃないんですか? そんなところに勝手に入って大丈夫ですか??」
弓使いのアークさんが慌ててそんなことを言いました。ふふ、シャークさんの金魚の糞だけのことはあって、物凄く臆病ですね。今はどんなリスクでもむしろ歓迎すべきでしょうに。
「えぇ、大丈夫ですよ。王様には話が入っているはずです」
「はず、だと?」
さすがは鋭いシャークさん、しっかりと怪しい点に突っかかって来ますが、最早ここでいくら言い合っても無駄ですからね。実際に大丈夫なところを見せた方が早いでしょう。
そういうわけで私はシャークさんの言葉をあえて無視して歩き始めました。
「おい、待てっ!」
それに、ついて来たくなければついてこなければいいだけのことですからね。その時は私一人で恩恵を頂戴することにしましょう。
門に立っている衛兵の方に要件を伝えると、中へと通されました。どうやらあの二人はついてくるようですね。ブラックさんは言わずもがなですが。
奥に通されると、流石にそのまま王様との謁見、とはなりませんでしたが、応接間のような場所でそこそこ地位が与えられていそうな方が待っていました。
この方が今回、私たちの直接的なクライアントということでしょう。さて、一体どんなお話をしてくださるのでしょうね。
「ごほん、遠路はるばるよく来てくれた。早速だが本題に入らせてもらおう。今回、あなたたちには東側にあるブディオス公国を制圧して欲しい。今、その国は民が反乱を起こし、王族が亡命している。今にも我が国にその飛び火が来るやもしれん。早急に対応して欲しい」
なるほど、そういうことでありました。確かに、いかに反乱を起こしているとはいえ、一国を制圧する、というのは並大抵のことではないでしょう。助言として人が多ければ多いほど良い、というのはこういうことだったんですね。
クランを丸ごと連れて来た甲斐がありましたね。
「わかりました、では報酬はどのようにいたしましょう」
なんと言ってもこの依頼主もまた国なんです。口約束では大した拘束力を持ちませんが、尻尾切りをされて、タダ働きになる、なんてことがないようにしないとですね。
まあ、クエストの仕様上それはないかもですが、できることならば報酬は多い方が良いですし、このゲームには交渉の余地が与えられています、それを活用しない手はないでしょう。
「ふむ、もちろん、仕事ぶりによっては国王から褒美を出すだろう」
おや、この反応は少し怪しいですね、もしかしたら嫌な予感が当たっているかもしれませんね。ここは少し準備をして出発するとしましょう。
「では、出発は一週間後でもよろしいですか? 私たちにも準備がありますので」
「よかろう、こちらから道案内を任せられる従者を出す、準備ができたらまた私に言ってくれたまえ」
「お気遣いありがとうございます」
そうやって私たちの仕事は受注できました。さて、面白くなるといいんですがね。
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