第871話 海上戦
ザクロ視点です。主人公が貴族の屋敷についた辺りの出来事です。多分。
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「むっ、イチゴ、ハク、どうやら来たみたいよ」
私たちは今、海の上にいる。強くなる為に、覚悟を持って出発したつもりだったけど、どうやら、その覚悟が足りなかったと言わざるを得ないようね。
私たちは、海の上で孤独で苦しい戦いを強いられていた。
「ハク、二時の方向から鳥型のモンスターが、イチゴ、下に鮫型のモンスターに回り込まれているわよ!」
「「はいっ!」」
二人に指示を飛ばしている私も、指示を受けた二人も現在進行形で戦っている。そう、別のモンスターを処理しながら他のモンスターのことにも気をかけないといけないの。
時にはトドメをさせなくても牽制だけに留めて別のモンスターの対処をしないといけないこともあるわね。とにかく敵の数が多くて、味方の数が少ない。これは戦力の増強を本気で考えないといけないみたいね。
でも、信頼できて尚且つ女性プレイヤーで、私たちと同等くらいの強さってなると相当絞られるのよね、どうしたものかしら……
にしても道中がこれだけ過酷ってことは極東の地には一体何があるって言う
「お、お姉様!」
私は余計なことを考えてしまっていた。
ただでさえ私は二人よりもさらに多くのモンスターを同時に相手にしているというのにも関わらず、戦いの最中に戦闘には直接関係のないことを思案してしまっていた。それが私の敗因。二人にアレだけ言っておいて私がこのザマなんてね。
振り返ると、そこには今にも私に噛みつきそうなサメ型のモンスターがいた。これで詰み、か。
完全に不意と死角をつかれた攻撃、意識は向けられてるけど意識しか向いていない。体は石像にでもなったかというくらい重くなってる。
とても時間がスローに感じられるけど、だからと言ってアニメの主人公のようにこの状況を打破する起死回生の行動は取れない。まるで海の底へと沈んでるような、そんな感覚だ。
あーあー、帰ったら二人になんて言おうかしら。あ、でも二人にはそのまま極東の地に向かって欲しいな。いや、それも私が死んだから無理か。
そんなどうでも良いことばかり頭の中を駆け巡るが、体は一向に動かない。あぁ、食べられる、と思った瞬間、
「お姉様! 【水魔術】、ウォーターボール!」
「い、イチゴっ!?」
なんと、イチゴが自分の対応しているモンスターを差し置いて私に噛みつこうとしたモンスターに攻撃を当てたのだ。そのおかげで私は九死に一生を得た。でも、そんなことをしてしまえば……
「きゃあっ!」
イチゴがモンスターに噛みつかれ、そして海の中へと連れ去られてしまった。
その後、モンスターの襲撃はピタリと止まった。でも、私たちの雰囲気は最悪だった。この旅を中断しようかとも考えたわ。でも、イチゴからこんなメッセージが届いたの。
『お姉様、私は無事でございます。ですので私のことは気になさらず前へとお進みください。私は必ず後から追いつきます!』
……もう、イチゴったら、いつの間にこんなに大きくなっちゃって。そうよ、こんな所でクヨクヨしている暇は無いわ。イチゴの分まで絶対に極東の地に到着するのよ!
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