第859話 エグザイル
ど、どうしてこうなった……?
俺は今、なんだかんだあって気づけば王様と面会をしている、らしい。
最初は、姫様に何かしようとしていた怪しい人という風に見られていたのだが、たまたま手に持っていたリヴァイアサンのお肉によってどうやら勇者認定されたらしい。
更に、正直にリヴァイアサンのお肉を姫に食べさせようとしたことを伝えると、そんな貴重なものを姫様にくださるとは、なんて優しいお方なのだ、と物凄く感激され、王への謁見までに至らしい。俺からしてみればアイテムボックスでずっと眠ってただけだから感謝されることじゃないんだよな、本当に。
大丈夫かな、冷凍焼けならぬアイテムボックス焼けしてないだろうか。
おいおい、王様ってそんなに近い存在でいいのかよ、とも思ったのだが、どうやらこの一族は亡命しているらしい。国が革命によって転覆され、なんとかここまで生き延びてきたらしいのだ。
その所為か、弱者の気持ちも分かるのだろう。俺が目の見えない状態であることを告げると、果てない旅、ご苦労であった、などど労われてしまった。うん、悪くない気分だな。
そして、潮目が変わったのが王様のこの一言だった。
「其方はリヴァイアサンをも倒しているとのことだが、目が見えぬ今でも戦うことはできるのか? それとも冒険者は引退してしまったのだろうか?」
この言葉は俺にとって衝撃的だった。何故なら、俺は俺自身の目が見えなくなったことで、無意識に襲われることはない、脅威は無くなった、と勘違いしていたからだ。そして、そんなはずはない。俺の目がどれだけ不自由になったとしてもモンスターはこの世界に存在するし、PKなどの悪意を持ったプレイヤーも俺に迫ってくるのだ。
そして、それらに対する対抗手段を持っていなければ一方的に蹂躙される。弱者だからと言って慈悲をかけられる世界ではないのだ。
それを俺は今、改めて亡命中の王様の言葉によって気づいた、いや、気付かされた。であるならば俺の答えは一つしかない。
「いえ、確かに目が見えぬ分、力は数段衰えておりましょうが、心は今でも冒険者であるつもりです。それに、目が見えなくとも、戦うことはできましょう」
「ほう、ではその力見せてもらってもよろしいかの?」
俺の言葉を聞いて王様は目をキラリと怪しげに光らせてそう言った。まあ、見えないから想像だけでしかないのだが。それにしても目の見えない冒険者にそんな声色で力を見せて欲しいなんて、普通言うか? どれだけリヴァイアサンに対する期待値が高いんだよ。
だが、この見知らぬ土地、を攻略する上で亡命王族なんてこの上ない貴重な情報源となるだろう。何かとつけて色々便宜図ってくれそうだしな。もし再興にも協力できたら王族がバックについてる魔王が誕生することになる。つまりはここで王様たちの信頼を勝ち取らねばならない、ってことだ。
「えぇ、もちろんですとも。ですが、期待はなさらずに、あくまで私は目が見えぬしがない旅人ですから」
「フォッフォ、では騎士長よ、相手をしてやってくれぬか」
「はっ、かしこまりました」
え、騎士長!? そ、そんなガチの人と手合わせするのか? マジかよ。正直なところ、謎の強キャラムーブしてはいるものの、戦うことができるかどうかわからないのだ。俺自身が戦わないといけない理由にまみれているだけで。
だから、この戦いで何か良い方法がないか探るつもりだったのだが、相手が騎士長ともなればそんな悠長なこと言ってられないかもしれない。これは、真剣に望まねば……
「おい、私はまだお前のことを信用してはいない。リヴァイアサンを倒したってとこも怪しいくらいだ。だから俺が全力で潰してやる。目も見えない奴に遅れを取る私ではないっ!」
ん、ん? あ、えーっとこれ、そういうパターンなんですか? 俺、嫌われてるんですか!?
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