第858話 肉肉しい
「あ、あのー、何ちてるのー?」
なっ!? ま、まさかの本当に現地人がいたのか? しかも声から想像するにかなり幼い。正直、俺の今の状態から考えてNPC側から声がかかるとは思っていなかったのだが、幼さ故の好奇心か。ならば、これが最初にして最大のチャンスだ。気に入られなければ!
「ん、ゴホン。そこにいるのはお嬢様かな? 私は今目が見えないんだ。どうか助けてもらえないだろうか?」
どうだ。小さい女の子にお嬢さんというフレーズは効果的なはずだ。それに、俺が弱者であることをアピールして頼られていることを実感させる! もうこれは不可避の誘い文句だろう。
「えー、やだ」
「え? や、やだってどうして?」
「だって、まーまから変な人の言うことは絶対聞いちゃダメって言われてるもん」
変な、人。た、確かに今の俺は目が不自由になってしまってここがどこかも分かっていない。そういう意味ではストレンジな人かもしれない。でも、そんな面と向かって変な人って言われると、思いの外傷つくな。これが無邪気の恐ろしさか……
「そ、そこをなんとかできないかなー? ほ、ほら、私にできる事ならなんでもするし!」
「何ができるの?」
「うぐっ」
防犯意識がしっかりしてやがるぜ、親の教育が良いんだろうな。それに、思ったよりもしっかりしてる? 声から感じ取れるよりも年齢は高いのだろうか。くそ、視界が塞がれただけでこんなに不便になるとはな。どれだけ人間は視界に頼って生きてきたんだよ。
「あ、そーだ。お腹すいた。何か食べたい、何か作って。そしたら考える」
お、ここにきて光明が見えたな。この世界なら俺は飯くらい作れるはずだ。システムの力を借りればある程度は目を瞑っててもできるだろう。問題は食材だが……
お、ウィンドウは問題なく見られるようだな。もしかしたらと思ったが、なんとか見させてもらえるようだ。んーでも問題の食材がなー。食材っていうよりもどちらかというとモンスターの素材、っていうべきアイテムばかりだ。
実年齢は分からないが、少なくとも俺よりは年下の可能性が大である目の前の少女に対して振る舞うべき食材はなさそうだな……いつかの時のニンニクが大量にあるが、ニンニクだけじゃ料理じゃなくてただの拷問だ。
と、とりあえず肉ねーかな。最悪、なんでも良いから適当に肉でも焼けば大丈夫だろう。肉、にく、ニク、に、、、お、あったこれにしよう!
実体化しても見えないから手触りだけしか頼れないのだが、肉をベタベタ触るのは良くないだろうからな。まあ、じっくり弱火で焼いたらいけるはずだ。
「お嬢さん、ここら辺に火を起こして良い場所、あるか
「ひ、姫様! い、一体こんな所で何をしていらっしゃるのですか! まあ、この方は? って、そ、それはリヴァイアサンのお肉!?」
ん、俺が今もってるのってリヴァイアサンのお肉だったのか。アイテム名もろくに見ないで肉という文字だけで選んだからなんのお肉かは知らなかったぜ。まさかリヴァイアサンのとはな。
「って、ひ、姫様!?」
この女の子そんな身分の人だったのか? ん!? ってことは俺、不味くね? 不敬罪って言われたり、姫様になんか怪しいことしてたとか難癖つけられたり……
よし、緊急時には速攻で死のう。全てのスキルを封印して剣で心臓を突き刺そう。
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