第856話 ショートケーキに柘榴を添えて


ーーーそれはちょうど彼が不時着した時のこと、



「ふぅ、これで完成、ね」


「お、お姉様とうとう完成されたのですか!?」


「えぇ、これで私の月光魔術が更なる高みへと至る事となるわ。この、新技でね」


「さ、さ、流石ですわ、お姉様! 私もとても嬉しいです! お姉様ならきっと完成させることができると信じておりましたわ!」


「ふふ、ありがとうイチゴ。それより、貴方達も準備はできたのかしら。そろそろ出発の時間よ」


「えぇ、もちろんで御座います! 私とハクの素晴らしいコンビネーションで必ずやお姉様のお役に立って見せます!」


「うん、頑張る」


「ふふ、それはとっても楽しみね。じゃ、準備もできたことですし、皆で向かいましょうか。極東の地へ」


「はい! ですわっ!」


「ん、そういえばその極東の地って、何?」


「は、ハクっ!? 今、皆で心を合わせて新天地へと向かう場面でしたわよ? そ、そんな話の腰を折るようなこと!」


「いいのよ、イチゴ。それに、ちゃんと説明していなかった私にも責任はあるわ。ごめんねハクちゃん」


「お、お姉様は一ミリも悪く御座いませんわ!」


「ふふ、変な日本語ね。それより、極東の地の説明をいたしましょう。その情報はまだほとんど公になっておらず、その土地を踏んだ者は誰一人としていないと言われる未開の地のことよ」


「未開の、」


「地、ですわっ!?」


「うふ、そうよ。その情報は現在、いくつかのクエストの報酬でチラッと匂わせる程度しか発見されておらず、正直、あるかどうかすら怪しい、そんな場所ね。でも、その代わり、物凄い報酬があるとも噂されているの」


「えぇっ!? そ、そんな所に行くんですのっ?」


「えぇ、そうなの。だから、もし行きたくないのならここで言って頂戴。私としても賭けに出ている節があることは認めるわ。危険も一杯伴うと思うわ。でも、それくらいしないとあの男には届かない……!」


「あの男、強い」


「あ、あ、あんな男、お姉様なら絶対に勝つことができますわっ!」


「えぇ、私も二度も負けるつもりは無いわ。でも、先のクラン抗争イベントでもあの人は活躍していた。それも、周りとは一線を画する強さでね。今の私でも正直勝てるかどうか、、」


「うっ……」


「だからこそ私たちは挑戦しないといけないの。それは私一人でもやるつもりよ。二人に強要はできない。だから、着いてくるかどうかは貴方自身で決めて欲しいの。決してその極東の地が存在したとしても生半可な場所では無いはずですもの」


「お姉様、私……!」


「いく」


「ちょっと、ハク!? わ、私も行きますわよ、お姉様! 私はお姉様がどこへ行こうとも着いていくんですわよーっ!!!」


「ふふっ、じゃあ全員参加ということで、皆、改めて行くわよ。極東の地へ!」

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