第857話 クソゲー開始
「ふぅ、」
これでとりあえず今すぐにやるべきことは終わった。これで俺がいくら戻らなくても恐らく大丈夫なはずだろう。と言うわけで、この視界が制限された状態で、よく分からん土地を攻略してや
ピロン
「あぁん?」
なんだ、この人をおちょくるかのような通知音は! 完全に俺の出鼻を挫こうとしただろ、絶対に。ふん、許さないぞ、どうでもいい内容だったら絶対に許さない!
「んな? イベント報酬について?」
それは俺が便宜上のリーダーを任せた山田太郎さんからのメールで、要件はこんな感じだった。クラン抗争イベントの報酬を選択しなければならないらしい。クランで使える便利なアイテムから強力な武器やスキル、様々なものが選択できるらしい。
「……」
反応しづらいな。俺個人としては報酬なんて本当にどうでもいいことなんだが、クランのメンバーからしたらどうでもいいことではないだろうし、俺としても彼らのことはどうでも良いと一蹴することはできない。
どうでも良いけどどうでも良くないと言う、通知音によって生まれた苛立ちをスッキリさせない内容であった。
にしても、武器をクランで保有するってなんだか会社みたいだな、なんて思ったりもした。あーあー、俺も現実世界の社長だったらなー。一生ゲームして遊べるのになー。いや、社長は社長で忙しいからゲームできねーか。
まあいい、この返信はもう決まっている。メンバーで話し合って好きな報酬を選べばいい。俺は報酬に関しては本当にどうでも良いからな。どうでも良くない人たちに任せるのが道理だろう。それに、俺からすれば本来参加できるはずのなかったイベントに参加できただけでも感謝しかないのだから。
そのような旨を書いて返信を送るとすぐさま返事が返ってきて、向こうも向こうで感謝しているようだった。是非ともクランの発展に役立てて欲しいものだな。
「うし」
ようやくこれで仕事が完全に終わったな。やっとこの不可解な状況に対して動き出せる。
にしても、改めて、なんで視界が塞がれてしまっているんだろうな。HPバーは見えることから単純に視界だけが塞がれているのだろうし、ここは視界制限エリアとでも言うのだろうか。
確かに死ねば治る可能性は大だが、と言うか死んでも治らなかったらただのクソゲーなんだが、ここに来れたのは半ば偶然の産物にして奇跡の着陸なのだ。再びここに戻ってこられる自信がまるでない。
一体、どうしたもんかなー。とりあえず歩いて見ることはできるが、目的地がなければ歩くことも意味をなさない。本当にどうしたもんだろうか。
そ、そうだ。とりあえず武装を解除しよう。この視界では戦うことはできないし、かといってもし現地人的な人がいて、俺の装備を見たら敵かと思われるかも知れない。無用な戦いは避けるべき、というかできることはやっておきたい。
あー、なんだよこのクソゲー。運営に魔王権限で愚痴ってやろうか? 魔王様が失明ってどう言うことだよ! あぁん?
「…………」
落ち着こう、イラついたところで何も解決しないのだからな。ゆっくり冷静に。目が見えないなら、瞑想をするためにわざわざ目を瞑る必要がないってことだ、一手間省けてラッキーってとこだな。
俺はその場に座って瞑想をしていると、俺の元に近づいてくる気配を感じた。そしてその存在は俺の目の前に止まって、
「あ、あのー、何ちてるのー?」
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