第852話 魂の震え


「【死骸魔術】、呪縛、奪魂」


 魂を縛り、奪う。


「なっ、何をしている!? わ、私から魂が抜けていくぅ!?」


 相手の魔法は確か霊魂魔法って言ってたよな? ってことは恐らく死霊魔法の劣化版ってことだ……まあ、なんとなくだけど。そして死骸魔術は死霊魔法の進化版だから、アイツが俺に勝てる道理は無かったってことだ。……知らんけど。


 ん? でもよく考えて見たら、こんな大量の魂どうするんだ? 奪うだけ奪ったところでどうしたらいいのか分からないんだが。浄化? 成仏? みたいなことはできないのだろうか?


 最悪目の前の、萎んだ風船みたいになってる敵のように魂を取り組んでもいいかもしれないが、さっきの化け物を見てしまうと自分がああはなりたくないと思ってしまう。


 んー、とりあえず燃やしておくか。火は古より人間にとって特別なものだろうからな、まあ火葬ってものがあるくらいだし、大丈夫だろう。


 にしても魂って不思議な存在だよな。現実では勿論のこと、ゲームの世界ですらよく分からない存在だ。


 確実にそこにあるのに実体はない、というのは空気や風とかで確認できるが、それにはないなんというか揺らぎのようなものがある気がする。儚さ、と言ってもいいかもしれない。


 かと言って、考えや言葉といった概念的なものよりかは確実に存在感があるのだ。変なもんだよなー。ってか、現実世界において魂ってなんなんだろうな。


 脳の働きである思考ともまた違うし、心臓の生きるための働きでもないからな。


「くっ……まさかここまでされるとは、ね。流石ですよ。ですが、まだ終わりではありません。第二、第三の力を持って貴方を追い詰め、行く行くは私がこの世界の


「んな、まだ居たのか。【断罪絶刀】」


 スパンッと首を刎ねると俺は再び魂について思考を巡らせ始めた。しかし、一度中断させられたからか、特に思い浮かぶこともなく、オレの視界がホワイトアウトし始めた。


 全く、人が一生懸命考えているのに邪魔をしないでほしかったな。少しくらい待つことはできなかったのだろうか。


 そんな八つ当たりじみたことを考えていた俺は現実世界、いや、ゲームの世界ではあるものの、目の前の風景に意識をやるのが幾らか遅れてしまった。


「「「おめでとうございまーーす!!」」」


 そして、全く意識が追いついていない状態下において突然の大声は驚愕に値する。いや、そんな綺麗な言葉ではまとめられないな。


 俺はメンバーのアツい出迎えにすんーげビックリしたのだった。


「お、おう。ありが、とう」


 そしてそんな返答しかできない俺は自分ことと状況整理でもう既に頭がいっぱいだった。


 頭がいっぱいになった俺が超巨大クラッカーが用意されていることに気づくわけもなく……


 ッパーーンッ!!!


「うひゃっ!」


 俺はすっごくおったまげてしまった。こんなに魂が震えたのはいつぶりだろうか。そう思えるほど、びっくりした。

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