第851話 ヒントの奔流
「はっ」
気づけば俺は化け物と対峙していた。物凄く歪で薄気味悪い怪物だ。そして、ふと両手の違和感に気付きそこに視線を落とすとそこにはかなり消耗してボロボロになった俺の拳があった。
……どうやら俺は怒りに我を忘れて暴走していたようだ。その代償として大してダメージを食らっていない様子のバケモノに対して、この両拳の損傷か。何をやっているんだ俺は。
確かにメンバーの命をいいように弄ばれてるのは気に食わない、いや
だったら俺がやるべきことはただ一つ、この気持ちの悪いモンスターをぶっ倒すだけだ。
ただ、一つ問題がある。いくら我を忘れていたとはいえ、怒りに任せた俺の攻撃を食らって無傷というのはどうもおかしい。暴走していたのなら尚更、手なんて抜けない筈だ。ならば、物理攻撃は効かないとみた方がいいな。試しに殴ってみてもいいが結果は同じだろう。
ならば考えろ、俺が次にとるべき一手を。さっきは本能が働いたんだから今度は理性の番だ。考えろ、考えろ、脳の隅々までフル回転させて打開の一手を思い浮かべろ。
俺の脳細胞を総動員させたお陰かどうかはわからないが、俺は身に覚えのない記憶を呼び起こした。
「死骸、魔術?」
俺がそう発言した記憶が存在するのだ。何故だろうか、だって俺は我を忘れていた筈だから口にすることはできないはずだ。もし本当に記憶が正しいのならば俺は無意識で発言していたということになる。
「クククク、もう終わりですかぁ〜? ではこちらのターン、と行きましょうか!」
ッダン!
相手が巨大な腕を鞭のように振るって攻撃してきた。俺は雑念を振り払い攻撃を避ける。あれこれごちゃごちゃ考えている余裕はなさそうだ。
この記憶が正しいかどうかは一先ず置いておく。走馬灯は生き残る方法を過去の記憶の中から探してる、っていうしな。多分、俺の脳が今の状況ならこれを使え、って言っているのだろう。ならばそれに従うしかないだろう。
ん、でも死骸魔術って一言で言っても、使役、召喚、蘇生、呪縛、奪魂、融魂、授魂の六つがある。一体どれを使えというんだ? まさか全部とは言わないだろうな……
ッダン!
またもや攻撃が飛んでくる。ってか、さっきからずっと攻撃されているが俺はずっとほぼ無意識で避けている。本能様様だ。にしても考えがまとまりそうな時にこうして攻撃してくるから、一向にまとまらない。もういっそ次の攻撃は食らってみようか?
「チッ、ちょこまかちょこまかとっ! いいでしょう、では最後の奥の手と行きましょう。まさかこれを使わされるとは思いませんでしたよ! 【ソウルアボーンブレス】!!」
ん、ソウル? ソウル! 魂、魂だ! なるほど、敵は魂を取り込んでその姿になった訳だよな? ってことはその魂を奪う、もしくは縛ればいいってこと
「だ」
俺は敵の攻撃に直撃してしまった。紫と灰色が混ざったようなその波動の奔流に俺は吹き飛ばされ、、、
なかった。
そうだ、俺、ブレス無効持ってるんだったな。ラッキー、後で海馬にお礼言っておこう。お前のおかげで考えがまとまった、ってな。
「【死骸魔術】、呪縛、奪魂」
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