第842話 コイツらのこと覚えてる人ゼロ人説
「ほう、やはり決勝の相手はあの人が率いるクランでしたか」
「んあ? 誰だあの人ってよ、んな奴いたか? まあ、どんな奴でも俺の拳でぶっ飛ばすだけだけどよ!」
「おいおい、まさか忘れたとは言わせないぜアッパー。あの頂上決勝で俺と一緒に負けたじゃねーかよ、アイツによー」
「ん、あ! もしかして俺が唯一負けた試合のうちの一つ、あの男か!?」
「おいおい、それじゃあ唯一じゃねーだろ。まあ、そいつって訳だ。アイツがこの時までどこで油を売ってたかは知らねーが、俺らは十分強くなった、強えー仲間もいる、絶対に倒すぞ!」
「ったりめーよ! 俺のこの拳に砕けないものなんてねーんだからよ! あの巫山戯た顎にガッチリ合わせてやるぜ! シュッシュッ、フッ!」
「はいはい、二人とも落ち着いてください、まだ試合まで少し時間がありますからね。作戦を立てますよ」
「んあぁ!? 俺があいつの所にいの一番に行ってぶっ飛ばす、それだけだろ! それ以外になんかあんのかよ、あぁあん!?」
「はぁ、全くこれだから……貴方はリーダーなんだから皆を引っ張らないといけないんですよ? 会議にくらい参加してください」
「おいおい、リーダーだからこそ一番の功績を残すためにブッ飛ばすんだろうがよ! それに、作戦とかを考えるのはお前ら参謀の役目だろう? 俺にそういうことは向いてねーって知ってんだよ。俺にはこの拳さえあれば十分だ」
「はぁ、そうですか。全く、こういう時に限って脳が働くのですから困ったものですよ。まあいいでしょう、では作戦会議を始めましょう」
「でもよぉ、作戦つったって特に何もねーんじゃねーか? アッパーじゃないが、全力でかかって全力でぶっ潰すだけだろ?」
「あなたもですかドラケ。それであの化け物みたいなプレイヤーに勝てるのならそうしてください。それとも貴方は敵のクランのアーカイブすら見てないというのですか?」
「い、いやアーカイブはちゃんと見たけどよー。見たけど、そんな作戦をこねくり回したところで意味なさそーっつうか、そういうのなんつーんだっけか? サクサクっと覚えるだっけか?」
「策士策に溺れる、ではありませんか? 全く、貴方もその口なら席を外してもらっても構いませんよ。しかし、できる限りの準備はしておくべきだと私は思いますよ。それで後悔するにしても何もせずに後悔するよりかは幾分かましですからね」
「わ、わーあったよ。ただ、俺から何かいい案が出るとかは期待すんなよ。一応俺も話を聞いておくだけだ。気になったことがあれば質問する」
「えぇ、もちろん最初から期待しておりませんのでご心配なく」
「おいおい、そりゃねーだろウィズよー。まあいいか、それで策ってのはどんなのなんだ?」
「やっと本題ですね。皆さんも大変お待たせいたしました。作戦について話しましょう。この戦い勝つ方法は一つ、あります」
「んお? ならいいじゃねーかよ、作戦会議をするまでもねーじゃねーか!」
「最後まで話を聞いてください。一つある、というのは逆をいえば一つしかない、ということです。この一筋の光明、いや蜘蛛の糸と言った方がいいでしょうか? これをものにできなければ敗北する、それも確実に、です」
ゴクリ。
その言葉によってその場が一瞬にして緊張に包まれた。
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