第843話 正しい骸の使用法
それは抗争が始まってすぐのこと、
「敵襲! 敵襲! 敵勢……三名!? ひっ」
もう来たのか!? と思う間も無くその悲鳴で我に帰った。
「お前らはコアを守っていてくれ! 絶対に死守するんだ! 俺は敵襲の相手をする! 今回の相手は一筋縄ではいかないようだ、皆、気を引き締めるように!」
皆にそう呼びかけたのはいいものの、俺が一番気が抜けていたということを突きつけられたようだった。ウィンドウを見ると数字が一つ減っている。恐らくいつも見張り役を買って出てくれてた人だろう。必ず彼の無念は晴らす。
扉を蹴破る勢いで外に飛び出すとそこには三人のプレイヤーがいた。三人ともフードで顔が隠れているのだが、その姿を見るとなんとも言えない感情が湧いてきた。何故かイラつくし、ぶち殺したい、そんな衝動に駆られたのだ。
相手はそんな俺の感情を読み取ったのか、すぐ様、踵を返して逃走を始めた。
「クソ、逃すかっ!」
俺は当然追跡をするのだが、思ったよりも距離を詰めさせてくれたない。スキルを使いたいのだがクネクネと逃げる敵に対しては光速は相性が悪い、直線的な動きしかできないからな。
そして、気づけば俺は砦から大きく離れた場所までやってきていた。だが、とうとう追い詰めた俺は敵に一瞬で肉薄しフードを取った。顔が見えないのはなんかウザイからな。
「え?」
そこに存在したのは骸だった。顔に生気はなく、目も虚だったのだ。ん、ってことは俺はこのもう完全に事切れている操り人形を必死に追ってたってことなのか?
どうやら俺は冷静さが欠けていたようだ。ひとまず冷静に骸を一刀両断し、冷静に天駆を使って空中に飛び立ち砦の位置を確認、そして冷静に光速を使って砦に帰る。うん、ここまでは完全冷静プレイだな。このまま圧倒的冷静さで終わらせてやる。俺をおちょくった罰だな。
だが、そこに待っていたのは更なる惨状だった。
メンバーが骸に変えられていたのだ。それもかなりの数。なんとか残っているメンバーだけで対処できているみたいだが、この均衡もいずれ崩れるだろう。さらに骸を増やされたらそこで終わりだ。
ってか、一体どこから骸を増やしているんだ? 一方的に増やされ続けたら流石に厳しいぞ?
「ふぅ……」
一旦落ち着け俺、色々予想外のことが起きまくっているが、そういう時こそ冷静にならなきゃだろう? さっきの完全冷静を思い出せ。よし、この調子だ。
まずは敵の位置を知る必要があるな。そして俺にはその為の手段は持っている。落ち着いて冷静に発動しよう。
「【叡智啓蒙】、【己没同化】」
己の存在を周囲に馴染ませ、感覚を広げていく。周りにメンバーが沢山いるため、俺に入ってくる情報量が膨大なものとなっているが、一瞬のうちに取捨選択して必要なものだけを手繰り寄せていく。
まだ、いない。俺が探しているのは砦を守ろうとするものではなく、襲わんとしているものでもなく、ただそれを傍観し事態を悪化させようとしているもの……
「見つけた!【光速】」
そこまでの導線をあらかじめ引いておくことで直線じゃなくても光速を使えるようにする。これは今思いついた方法だ。そして、、、
こいつが元凶か。絶対に許さない。
「【厭離穢土】」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます