第832話 親に褒められたい
引き続き内気な少年目線です。
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空から降ってきたリーダーは開口一番こう言った
「お、ちょうど良かったっぽい?」
「え?」
僕は思わず間抜けな声を出してしまった。でも、それがリーダーに咎められることは無かった。
「皆さん、一度集まっていただけますか?」
リーダーはメンバーに向かって集合を優しい口調で命令した。マグマに浸かっているのに死ぬどころかダメージすら食らっていないこの光景にリーダーは違和感を感じていないのだろうか。
「皆さん、ちゃんとスキルの取得に成功したみたいですね」
「スキル……?」
「あ、確かに車以外君には回復を担ってもらってたから気づかなかったのか。彼らはマグマによって無効化スキルを獲得したんだ」
「無効化スキル?」
「そう、マグマによって死にまくるとマグマに耐性ができるんだよね。恐らく炎熱無効というスキルを手に入れている筈なんだが……え、違う!? 焼死無効? ら、らしいよ。後で君も俺と一緒に獲得する?」
「え、あ、はい」
僕はちょっと頭がついていけなかかった。マグマのなかでメンバーたちを殺してたのは街とここを往復させることが狙いじゃなくて、最初からこのスキルが目的だったってこと? だからちょうど良かったっぽいっていう発言をしたのか。
リーダーは全て計算済みだったってことなんだな。流石すぎる、その上で自分はすでに持っているであろうスキルを僕だけの為に一緒に獲得しようとしてくれるなんて、どれだけ人徳のある人なんだろう。背中が大きすぎてもはや眩しく見える。
さっきは微妙な反応しかできずに本当に申し訳ない。
そんなことを思っているとリーダーは更に言葉を発した。リーダーのありがたいお言葉だ、一言一句聞き逃すわけにはいかない。
「他にもスキルを獲得した奴はいるか?」
そう聞くと多くの人が手を挙げ、発言をした。
「ふむふむ、筋力増強に泳力強化ね。投擲、はいはい、他には? 指揮、おーお前凄いな。え、投擲が進化して抛擲に進化した? やるな。腕力強化や握力強化って奴らもいるのか、面白いな」
他にもまだまだその報告は衰えることを知らなかった。メンバーの皆が親に自分の成果を自慢するかのように報告する様はどこか羨ましくもあった。
そして自分はヒーラーに選ばれたから、特別なんだと思っていたけどそうじゃ無かった。リーダーからしたら皆んな特別でみんなメンバーなんだ、ってことを理解した。特別な役職を与えられて少し浮ついてた。皆がこれほどまでに強くなろうとしてるのに
「ん、車以外どうしたんだ? お前も強くなったんじゃないのか?」
こんな僕にもリーダーは変わらず声を掛けてくれた。どれだけ素晴らしい人なんだろうか。もう、僕はこの人についていくという道以外考えられないよ。
「はい! 僕はハイヒールがメガヒールに進化しました! それに称号、治療者を獲得して回復効率も上がりましたよ!」
気づけば僕は他のメンバーと同じように親に褒めてもらいたい子供のように報告していた。
「おおそうか、凄いな! これからもクランの回復役として励んでくれ」
「はい、もちろんです! この身果てるまで回復に捧げますっ!」
僕の人生は今日この日をもって決定的に変わったのだった。
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