第830話 ヒールとプレゼント


 俺は全力ダッシュで最寄りの街に戻ると、スキルショップを探して駆け込み、回復スキルを見繕ってすぐに出た。そして、そのまま直帰するのではなく、MPを回復するポーションも相当数用意してから火山の方に向かった。


 最近はあまり死んで無かったからか結構金額が残ってたのは幸いした。


 今回用意した回復スキルは、ハイヒールだ。俺が以前手に入れたメガヒールとかもっと高位のスキルがあれば良かったんだが、ぱっと見一番高い奴はこれしか無かったのだ。あの始まりの街の爺さんのお店まで行けば話は変わってくるだろうが、あいにく今の俺には時間が無かった。


 火山に到着してあたりを見渡してみても、うん、まだメンバーは戻ってきていないみたいだった。良かった良かった。


「じゃあ車以外君、君にこれをあげるね。使い方は大丈夫かな? あとはコレも渡しておく、もしもMPが切れたら是非とも使って欲しい」


「こ、こんなに!? あ、ありがとうございます!!」


 少年はとても喜んでくれた。そんなに喜ばれるとこっちまで嬉しくなっちゃうじゃないか。俺からしたら適当に仕事を押し付けているだけなのに。


 まあ、仲間ハズレとまでは行かなくてもペアができなかったという事実は少年の心に良くない影響を与えるかもしれないから、という理由でよくしているのも事実だ。少しでもそのマイナスをプラスに変えたかった、というのは後付けではあるものの、本音でもある。


「よし、じゃあコレから君はこのクランの回復役として皆を支えてくれ」


「はいっ!!」


 うん、良い返事だ。そんなこんなで気づいたらメンバーが揃ったようだ。話している間に、ボチャンボチャンと落ちてくる様は少し面白くて吹き出しそうになったのは内緒だ。


「では今から水球を始める。勿論、一番多く点数を決めた者にはご褒美があるから頑張って欲しい。途中で好きなだけチームは変えていい。じゃあ私は少し自分の用事を済ませてきますので、頑張ってください」


 そう言って俺は火山の火口から出た。


「さて、何をしようかなー」


 俺は火山の縁に立ってそんなことを呟いた。こんなに高くて開けた場所にいるとついつい独言を言ってしまうな。だが、いつまでもここにいられる訳ではない。その内、マグマで死んだメンバーたちが走って戻ってくるだろう。


 そうだ、今のウチにご褒美を用意しておかなければだな。適当にやる気を出させる為に言ったことだから勿論まだご褒美なんて存在しない。早急に準備しなければ嘘つきの汚名を着せられてしまう。


 ご褒美かー。もらって嬉しいものといえば、武器や防具とかか? でも今すぐ準備するとなるとちと厳しいな。爺さんの頭が禿げてしまう。


 となるとスキルか? クラン内での役職を与える、ってのもアリだな。


 あ、そうだ。ご褒美ってその人に直接聞いた方がいいか。俺、プレゼント考えるのとか苦手だったし、もしあげて微妙、って思われるよりかは本人からの意見を聞いて絶対に喜ぶものをプレゼントしたい、って思っちゃうんだよな。


 よし、ならこれでご褒美に関してはオッケーだな。じゃあ私事をしにいくかー。


 まあ、私事と言っても死ぬだけなんだけどなー。どうしようか、どうやって死のう。


「あ、」


 そういえば高校生の頃に読んだ小説で車折の刑ってのがあったんだが、引き裂かれるのって物理攻撃に入るのかな?

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