第829話 ルルとチム


「「「す、水球!?」」」


 メンバーの何人かが漫画のようなリアクションを取ってくれた。まあ、そりゃそうなるだろうな。俺だってここに着いてから思いつきで考えたことだし。


「ルールは簡単です。私が適当にその辺の岩でゴールとボールを作るので後は泳いで奪って投げてゴールを決めてください。おっと、その前に」


 回復回復ーっと。随時回復してあげないとすぐに死んでしまう。まあ、マグマの中にいるんだからそれは当たり前なんだが、少し大変だな。そうだ、ルールを追加しよう。


「あと、死んでしまった方はダッシュで戻ってきてくださいね? 点を決めた方には私が回復をしてあげます。そんな所でいかがでしょう、まずは五点マッチでいきましょう」


 っと、この間にもダメージ結構食らってるな。もう俺がただの回復マシーンと化してるじゃねーかよ。よし、今の回復している間に分体にゴールとボールを用意させよう。火山だから岩には困らないはずだ。


 そういえば学校で火山には色々性質があったよな、粘り気があったり、なかったり、それで岩の性質、マグマの性質、挙げ句の果てに火山の形まで変わるってんだから面白いよな。


 お、そんなことを考えているとゴールとボールも完成して、回復も終わったな。こういう時は本当に分割思考と分け身は便利だな。ん、少しボールが重い気がするな。岩でできてるからそりゃそうなんだが……まあこれもトレーニングになるか!


「では、二人組を組んでそれぞれコイントスを行ってください」


 あ、人数、、、そうだ余った奴にはヒーラーでも任せてみよう。そうすれば俺が監督しなくても回るようになるな。人数のこと全く考えて無かったけどそれが逆に功を奏したな。


「では、裏と表チームに別れてもらって、余った人はどこにいますかー?」


 俺がそう聞くと、一人の気弱そうな男の子が手を挙げた。恐らく自分から声をかけられなかったんだろうな。俺もそうだから気持ちはよく分かる。まあ、この子は戦闘が得意です! って感じでもないからヒーラーにピッタリだな。


「こっちにきてください。お名前は?」


「はっ、はい。しゃ、車以外といいます……」


 その少年はとてもバツの悪そうな顔で俺の前までやってきた。車以外、なるほどシャイガイってことか、センスはあるみたいだな。センスがある人は無条件で贔屓できるな。なぜなら俺にはセンスがないからだ。


「よし、じゃあチームに入れなかった君にはヒーラーになってもらう。俺の代わりにチームのみんなを回復させるんだ、いいね?」


「え、あ、はい……で、でも僕、回復スキル持っていないんです、、、ごめんなさい」


「え、大丈夫だよ? 俺が無茶して言ってるんだからそりゃ持ってなくて当然だろ? 俺がスキルを買ってきてやるから、それを使ってくれ」


「い、いいんですか!?」


 ん、スキルを買うくらいで大袈裟だな。そんなに目をキランキランと輝かせるほどのことか? 心が濁ってしまった俺には眩しすぎるぜ。


「お、おう勿論だ。あ、でも今から買ってくるからちょっと待っててな。すぐ戻ってくるからな。じゃあ、皆さんも水球、始めておいてください!」


 そう言って呼びかけると一斉に皆が動き、出さなかった。


「……あれ?」


 先ほどまでメンバーがいたところを見ると、そこには誰も残っていなかった。


「あ、回復忘れてた」


 俺と車以外は岩の上に登ってたからダメージ量が減ってたんだろうな。全員が俺の不注意で死に戻りするって可哀想だな。しかも、多分ダッシュで戻ってこなきゃだよな? ……頑張ってほしい。これもトレーニングの一環なんです。


 よし、今のうちに俺も買い出しに行ってこよう。皆が戻ってくる前に戻ってこれたら完全に隠蔽できるからな。


「【光速】」


 一人残されてしまった車以外は……水切りでもしといてな。







——————————————————

因みに、タイトルの元の姿は「ルール説明とチーム分け」です。勿論バレバレでしたよね?次はもっと捻ろうと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る