第820話 疫病コーン


「ふむ、ここがなんとかコーンの居場所かー」


 俺は今、薄暗い洞窟の中にやってきていた。確か第三の街から行けるとこだった気がするんだが、ハーゲンに連れて来てもらったから定かではない。俺よりもハーゲンの方が地理に詳しいのはもう疑いようもないだろう。


 さて、俺はここに疫病耐性の向こう側に行くために来たのだが……


「あ、」


 いた。あいつがなんとかコーンだな。ものすごく汚い見た目をしている。このよの汚いものを更に十倍汚くしてそれをかき集めて大きなバケツでかき混ぜた後にそのまま地面にぶちまけたらなんかゼリー状になっちゃった、みたいなモンスターだ。正直戦いたくない。


「ってか、くっさ!」


 無茶苦茶な悪臭が漂っているぞ? さすがはこの世の全ての汚を集めた存在。だが、ここまで来ておいてやっぱ辞める、は通用しないだろうなー。なんの為にここまで来たんだよって話になるし。さて、どうやって疫病無効を獲得するかだが。


「ぐ、グォ、おおああ」


 まじか、こいつが本当に昨日言ってた厄神か? 神から一番遠いところにいる気がするんですけど?


「お、オェえええ」


 バシャッ


「あっ」


 え、今俺何を浴びせられたんだ? このゲロみたいな生物というかモンスターの何を浴びせられたんだ? もしかしてゲロのゲロじゃないだろうn


「オロロロロロロ」


 臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い。俺は臭いに全てを持っていかれそうになったがそれで気合いでステータスを確認した。そこに表記されていたのはもちろん、状態異常……疫病。


 くそ、疫病がどうとかよりもこの臭いをどうにかしてくれ! ってか疫病って実際問題なんなんだ? 臭いの方が五億倍嫌なんですけど。


「ゴホッン、ゴホッ」


 うっ、急に咳が? これはゲームの中じゃ絶対にありえない現象だ。つまりこれが疫病の効果ってことか? 咳を発生させてなんになるというんだ?


「ん?」


 あれ、いつの間にかさっきまでのエゲツない悪臭が消えている。どういうことだ? もう疫病の効果が終わったのか?


 そう思ってステータスを見ると、そこには先ほどと全く同じ位置に疫病の二文字が。なんだか頭の回転の鈍くなってる気がするし、何より体が怠い。


 そのまま突っ立っていると、立っていることすらしんどくなってきた。これが疫病の恐ろしさか。咳もどんどんしんどくなってきたし、自分の咳で自分の体が壊れてしまいそうだ。


 俺、もうすぐ死ぬのかな、そんなことを思った時だった。


 バシャッ


 第二波が来た。


 俺は遠のいていく意識の中で一つだけ決めたことがある。


 アイツだけは絶対に許さない、と。


 ❇︎


 その後も俺は神だかゴミだかよく分からない奴に延々と挑み続けて何かを浴びせられ続けた。正直、最後の方は完全に心が死んでいたと言っても過言ではない。いや、確実に死んでいた。残っていたのは目の前の敵に対する殺意のみだった。


 そして、ついに聞こえてきた天の声さんの音声を聞き終わる前に、


「【爆虐魔法】、ツァーリボム」


 薄暗い洞窟ごと爆破してしまった。



ーーースキル【疫病無効】を獲得しました。



 ふぅ、これでやっとクラン抗争イベントに集中できるな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る