第819話 今一番欲しいスキル


「んんーーーっ、はぁ」


 俺はゲームにログインすると大きく伸びをした。昨日は結構寝てしまっていた。せっかくのオフ——とは言ってもゲームの中での話だが——だから好きなことをしようと思っていたんだけどな。


 まあ、寝るのも大好きだからよしとしよう。


 そして今日やろうと思っていたことなんだが……今日は久々にあれをやろうと思っている。


 そう、ステータス上げだ。レベル上げではなくステータス上げだ。近頃は死因を結構網羅しちゃったっていうのと、いろんなことが重なったというのもあって中々できていない。


 俺の原点はやっぱり死ぬことだからちゃんと定期的に死ぬ必要があるんだよな。いくらゲームといっても生きてる実感を与えてくれるのは死ぬことだけだからな。


 それにしてもどうやって死のうかなー。物理攻撃は効かないし毒もだめだろう? 温度も無効になってるし、おいおいどうなってんだ俺の体は! もっと楽に死なせてくれよぉ〜。


 ゴホン、茶番はこれくらいにしておいてだ。いつもなら貫通でサクッと死んでいるところだがどうせならちゃんと死にたい、そんなことを思いながら手慰みにステータスを見ていると俺はあることに気がついた。


「疫病、、、耐性?」


 そう、無効スキルがズラーっと並んでいるところに一つだけ耐性のスキルが紛れ込んでいたのだ。疫病耐性をそもそもどこで取ったのかすら覚えていないのだが一つだけ耐性のまま、というのも気になる。折角なら今日のうちに無効にまで持っていきたいな。


 というわけで、


「お邪魔しまーす」


 俺は暗殺ギルドにお邪魔した。いやーここに来る事自体もとても久しぶりだな。受付の方は元気にやっているだろうか?


 お、相変わらずゴリマッチョな受付さんだな。元気かどうか心配するまでもなかったようだ。それにしても今更だが、受付がマッチョってどうなんだ? 普通は美人、とまではいかなくても女性が普通だろう?


 男が受付してる時点で珍しいのにマッチョってもう、ただのヤバい組織だろ。


 そんなヤバい組織に属している俺は受付の人に早速聞いてみた。


「あのー、疫病を使ってくるモンスターの依頼ってありますか?」


「あぁん?」


 はいもう確定でヤバい組織です。この受付の人サングラスかけてるから尚更ヤバいんですけど? ってか、そんなに睨まないで欲しいです。なんでサングラス越しでも睨んでるのがわかるんだ? 人相が限界突破してるだろ絶対。


「おいおい、疫病ってお前もしかしてエル・カンコーンを倒そうっていうのか? あぁん?」


「えるかんこーん?」


 コーンってなんか美味しそうだな。普通のコーンでも焼きでも、ポップでもいいんだが、えるかんってのは聞いたことないな。


「はっ、まさかんなもんも知らねーで厄神を倒そうなんざ十年はえーんだよ。さっさと出直しな! そもそもここはお前みたいな奴が来るとこじゃねーんだよ」


 おいおい、その見た目でそんな言葉遣いだといよいよ人間関係が不安になってくるぞ? まあ別にこの人の人間関係は俺には関係ないんだけどな。


「すみません、じゃあそのなんとかコーンの依頼を受けさせてください」


「はぁ!? 人の話聞いてんのか? あぁん?」


「あ、これがギルドカードです」


 少し面倒臭そうだったのでギルドカードを提示してみた。これがあれば意外とどうにかなるって俺は知ってるからな。


「んぁあ? なんでギルドカードなんざ……うっす、只今準備させていただきます」


 うむ、よろしい。

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