第821話 新たな敵
俺は気づくと荒野の上に立っていた。これはなんとかコーンを倒した洞窟の跡地じゃない、イベント会場だ。
そう、もう抗争は始まっている。
結局昨日は、オフであったのにも関わらず癒しとは一番遠い場所に赴いたことで一切休憩にならなかった。まあ、そりゃ俺が望んだこととはいえ、もう二度とあんなことしたくないな。
だがこれでステータスも上がったし、疫病無効も手に入れてパワーアップは果たせたんだ。この抗争ではなんとしてでも結果を残す! そう意気込んでウィンドウを開くと今までとは少し違った形で表示された。
『〔フンコロガシ〕vs〔秘密の花園〕vs〔深夜組〕vs〔AA〕』
「四つ巴か……」
誰かが、メンバーの誰かがそう呟いた。確かに四つ巴は初めてだな。ただ、まあやること自体はそう変わらないだろうな。敵をぶっ倒せば勝ちなのだからぶっ倒すまでだ。
「え、エーシーズだって!?」
またもやメンバーの誰かが言葉を発した。まるで、戦う相手のクランを知っているかのような口ぶりだ。しかし、エーシーズ、なんてクランはないぞ? どういうことだ?
「な、なあエーシーズってなんだ?」
俺は近くにいたメンバーに肘で小突いてヒソヒソ声で聞いてみた。すると意外な答えが返ってきた。
「おいおい、まじかよエーシーズ知らねーのか? このゲーム最強のクランで上位ランカー共の巣窟、なんて呼ばれてるクランだぜ? ちょっと前まで聞いたことなかったが、最近メキメキと力をつけてきているクランらしいぞ。それに、噂ではプロゲーマーやライバーだって、って、え? リーダー!?」
途中まで饒舌に語ってくれていたのに、俺がリーダーだとわかるや否や、腰が抜けてしまった。おいおい、そんなに驚くこともないだろう。それともあれか、俺ってばやっぱ嫌われてるのか?
それにしてもAA《エーシーズ》かー。かっこいい名前だな。エースの集まりってことだろ? つまりは背番号十番の集まり、いや四番の集まり、んー、まあ兎に角強い奴らがわんさかいるってことだろ?
それに比べてウチのクラン名は……
彼らと戦う時は死んでも自分のクラン名は言えないなー。いや、待てよ。言えないって思ってることの方がダサくないか? 確かに認めよう、フンコロガシはAAよりもダサい名前であると。しかし、それを恥ずかしがることが最も恥ずかしいことだ。
それに名前はとても重要だが、名前が全てではない。それを証明してやらねば……!
「というわけで俺、AA《エーシーズ》と戦いにいくから後は頼んだ」
「「「「「「…………はい?」」」」」」
俺が皆にそう言うと一斉に振り向かれてしまった。あれ、俺そんなにおかしなことを言っただろうか?
「あ、そうか。作戦は、とりあえず砦の防衛力を強化していつものグループに分かれて攻めと守りに分かれて行動してくれ。どっちがどっちの担当するかは話し合いで決めていいからな。じゃ」
そう言って俺は砦から飛び出していた。背中に突き刺さる無数の視線を感じながら。
まあ、無数って言っても、四十九の二倍だから、、、最大で九十六個しかないんだけどな。
俺は逸る気持ちをそんなどうでも良い事を考えることで押さえつけていた。俺は意外にも、自分がこれほど戦いたがっているという事実に驚いていた。
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