第818話 呆気ない結末


 鴉狼一夜で敵襲の残りを全て片付けると俺は一息ついた。流石にあの量はキツかった。主に精神的な理由で。


 俺がメンバーの方を見やるとそこには皆それぞれの反応を見せていた。その中には、「え?」というような驚きも含まれており、俺はあることに気がついてしまった。


 これはもしかして皆も戦いたかったパターンか? 確かに俺も臨戦モードに入って意気揚々と外に出たら、リーダーが全員を一人で倒してる、みたいな状況になったら少し嫌かもしれない。


 少なくとも俺のやる気を返せよ、とは思うだろうな。


「あ、あのー。皆、その、すまん。今度は皆で倒そうな、うん……」


 俺が慌ててそう取り繕ってももはや手遅れの様だった。皆、ぎこちなく頷きながら砦の中へと戻って行ってしまった。


 あーあー皆んなに嫌われたかもしれないな。まあ嫌われたら嫌われたで抜ければいいだけだからいいか。勿論、魔王城地下は解体するけど。


 そんなこんなで砦に戻って、ウィンドウを確認すると50/50という数字がフンコロガシの下に表記され、残り二つは殆ど虫の息しか残っていないようだった。今の攻撃に本当にほぼ全てのリソースを費やしていたようだ。


 なぜそれほどまでのことをしたのかは分からないが、大胆なことをしたもんだよなー。似た者同士とはいえ他のクランと手を組んでさらに防御を捨てて攻撃してきたんだからな。攻撃は最大の防御という言葉があるが、それは攻撃力によるということを教えてくれたいい例だったな。


 その後も何の面白みもなく、防衛に回っていた数少ない残党を弱いものグループが処理したことによってクラン抗争第二回戦は終了した。


 まあ、勝利のことだけを考えれば面白みなんてものは一切必要ないんだけどな。負けたら俺の所為になっちゃうだろうし、俺はメンバーから責められたくはない。


 責められるくらいならクランを去る方がよっぽどマシだと思えるくらいには嫌だな。


 俺はそんな取り留めのないことを考えながら白い光に包まれた。とにかく今回も無事に勝てて良かった。


 現実世界? に戻った俺は次の試合の日程を確認した。一試合にかなりの時間を割り当てられていることから、一日に行われる試合数も当然少なくなる。


 予選である現段階では並行していくつもの試合が行われているが、それでも個人戦のようにバトルロワイヤルで一気に、というわけにはいかないようだ。


 そして、それは次の試合の日程にも影響していた。なんと明後日に行われるそうだ。つまり、今日はともかく、明日は完全なフリーな日、ということになる。


 普通であればクランで集まってミーティングなり戦術の確認なり、訓練なりを行ったりするのだろうが、ちょっと一人になろうと思う。


 俺自身色々試しておきたいことができた、というのもあるが、やはり一人でいる方が落ち着くのだ。クランにいるとどうしてもリーダーとしても責務を背負うことになってしまって、知らず知らずのうちに精神的負荷を抱えてしまっていた。


 明後日からどうせクランでどうせ集合するのだから明日くらい一人になっていいだろう。


 そんな独りよがりな言い訳を考えながら俺はログアウトした。


 遠のいていく意識の中で、俺は今まで機会がなかったからソロを続けていたのだと思っていたのだが、そもそも性分的にソロがあっていたのだな、と今まで意識することのなかった自分の特徴に気がついた。


 案外、魔王という職業は向いているのかもしれないな。そんなことを思いながら突如襲ってきた眠気に抗うことなく、再び意識を手放した。

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