第817話 メンバーの僕
それは先兵が僕たちの砦に攻めてきて、数の利を活かして倒した後の出来事だった。無事に防衛に成功し砦に戻ろうとした僕達の耳に、
ボゴッ
そんな音が聞こえてきた。一瞬、大砲か何かの攻撃音かと思ったが、それにしては音量が小さい気がするし、何より次弾が飛んできていないことからも違うと考えられる。
だが、相手は僕達の様子を見ていて、外に様子を見に出た瞬間、スナイパーのように待ち構えていて浮いた駒を落とす。みたいなことを狙っているかもしれない。ここはもう少し時間を置いてから外に確認してこよう、そう皆で話し合った時、砦の扉が開いた。
やはり敵襲だったのか、と皆が武器に手をかけようとした時、そこに現れたのはリーダーだった。
「お、おい! 大丈夫か!?」
何やらリーダーは相当緊迫した様子で僕達のことを心配してくれているようだ。しかし、何を心配しているかが分からない。さっきの先兵のことかもしれないけど流石にあれくらいは僕達でも対処できる。ということはリーダーが心配しているのは別の何かだ。
「えーっと、数字が減っているのが見えたから全力でこちらに戻ってきたんだが、今はどんな状況だ、敵は何処にいる!?」
あれ、これは本格的に先兵を警戒してダッシュで戻ってきたってことなのかな? いや、流石に違うよね?
「え、えーっと、もう一度ウィンドウを確認してみては如何でしょうか。クラン名までしっかりと。私たちはまだ誰も死んでいませんよ? 先程先兵がやってきたので処理致しましたが、恐らくそれと間違えられたのかもしれません」
い、一応そう提言してみる。失礼な言い方になっていないか不安だったけど、反応からしてそこには注意は向いていないようだ。うん、よかった。
「えっ?」
でも、リーダーの反応は思ってたのとも違った。えっ、と口にした後、数秒の沈黙の後、咳払いをしてこういった。
「ゴホン、ゴホン、分かった。ではそうだな折角私も来たのだ。防衛に参加しても良いだろうか?」
なるほど、リーダーはただ単純にここの防衛に参加したかったのか。確かに僕たちもリーダーに鍛えてもらったとはいえ、リーダーに比べればまだまだ全然よわっちいからそれも仕方がないんだろう。
もちろん断る理由もないので皆が受け入れようとしたその時、けたたましい音が耳に届いた。
「敵襲、敵襲!」
どうやら見張りをしてくれていた人の声のようだ。しかもこの声の張り方からして先ほどの先兵とは訳が違う、本物の敵襲なんだろう。敵の数はどれくらいなのか、続く報告に耳を済ませていると、
「敵、およそ百五十、敵およそ百五十!」
え、百五十!?
僕は驚いた。そんなはずはないからだ。そして体が固まってしまった、どうしよう、って。
でもリーダーは違った。その音が聞こえた瞬間にもう動き始めていた。リーダーは一人でもその百五十という敵に立ち向かおうとしているのだ。
いくらリーダーが強くても、、と思ってしまったけど、そんなことは関係なかった。だって、ここで戦わなければどうせ負けるのだから。
僕達も遅れながらも慌てて外に出た。そしてそこで見た光景は異常極まるものだった。
瞬間移動のように縦横無尽に駆け回り、敵を倒していく様は、恐ろしいものではあるけど、それと同時にどこか美しさも感じてしまった。
「綺麗……」
呆然とみる事しかできなかった僕は、突っ立ったままリーダーの姿に見惚れていた。
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