第816話 神出鬼没


 俺も外に出て様子を確認してみると、敵襲の百五十が嘘でないことが分かった。


 いや別に嘘だと疑っていたわけではないのだが、俄に信じられなかっただけだ。メンバーが嘘をつく必要もないしな。


 だが、百五十もの軍となると、多勢に無勢だな。どれだけ頑張っても数の利でゴリ押されてしまってはたまらない。


 ここは少しばかり本気を出さないといけないみたいだな。幸い新しいスキルもあるんだし、ちょっと頑張りますか。


 メンバーの皆も各自、戦闘モードに切り替えて敵襲に備える。どうやら防衛を中と外で分けるようだ。悪くない考えだ。


 俺はもちろん外に出る。一つでも多くキル数を稼ぐことが求められてるだろうからな。


「【光速】」


 グサッ


 俺は瞬間移動の様に敵の前に姿を現し、心臓を貫いてまた移動した。


 目視によって移動できるから剣を体に固定するだけでグサッとしてくれる。そして感触を確認し次第、瞬時に移動する。これの繰り返しだ。


 刺しては消えて移動して刺しては消えて移動する。なんとも簡単で楽しい作業なんだろうか。


「やぁ」


 グサッ。


「コンニチハ」


 グサッ。


「ん?」


 グサッ。


「やっほー」


 グサッ。


 トントン、グサッ。


 お、肩を叩いて刺すのなんかいいな。ほっぺむにゅってする奴の上位互換みたいだ。


 俺はその後もひたすら光速で高速移動しながら殺しまくった。この際、動物愛護とか虐待とかは頭から排除した。


 砦を攻められいるのだ。仕方がないだろう。



ーーー称号《神出鬼没》を獲得しました。


《神出鬼没》‥何度も敵の意識の外から命を刈り取る。自分の存在感をコントロールできるようになる。また、存在感が希薄な時の攻撃力が上昇する。



 へー、なんか今の俺にはピッタリだな。じゃあ存在感をマックスまで下げてっと。光速で誰かの後ろへと移動してみる。


 おー、確かに、背後を取ったくらいじゃ気づかれてないな。じゃあ、


 グサっ。


 相手さんからしたら何が一体どうなっているのか、って感じなんだろうな。急に背後から刺されてどんな状況かも分からずに息絶えるなんて……


 誰だこんな悪行をしているのは?


 グサっ


 ってか、このままやっていってもいいけど少し時間がかかりすぎるな。なんか手っ取り早い方法ないかなー。


 でも爆虐魔法だともし砦の方に危害が加わったらまずいしなー。どうしようか。


 あ、そうだアレを使ってみよう。範囲は……敵全体を覆うような感じでっと。


「【鴉狼一夜】」


 その瞬間、草原に夜が生まれた。


 夜は同時に闇を生む。闇からボコボコと生を求めるかのように狼と鴉が出現し、命あるものを攻撃し始めた。


 中にいた者は突然の出来事に体が追いつかず、されるがままに傷を増やしていった。


 そして夜が明けると、、、


 そこに立っているものはいなかった。

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